日本の学費負担の国際比較から、今後の家計への影響を考えてみる。

「一億総活躍」の掛け声が始まって
もうしばらく経ちますが、その主なテーマは
女性の活躍でしょう。

ただこの問題は様々な課題があって、
その中でも子育ての問題は大きいです。

あまり詳細まで議論し始めると1記事には収まらないですし
ここはお金のブログなので教育費に絞って考えてみます。

教育費はライフプランへの影響も大きいですので
今回は真面目に(?)データを参照しながら
世界における日本の状況と家計への影響について
調べてみました。

教育費の家計支出の国際比較は?

OECDによる出版物(教育に関する指標一覧とデータ)がありますので、
そこから日本の教育費負担に関するデータをピックアップしてみました。

日本の大学4年までの学費と国際比較(OECD)

日本の小中高、大学への私的支出(青)・公的支出(グレー)と国際比較

具体的な数字をみると、
日本の大学への公費支出はGDPの約0.6%、
私的支出はGDPの1.0%で合計1.6%。

OECD平均がGDPの1.6%なので
かろうじて平均に達していますが
私的支出は大学支出全体の約65%と
OECDの中でも突出して高いです。

(私的支出の全てが家計支出ではないですが、
大学支出の51%が家計からとなっています(OECD平均は21%))

逆に言えば公的支出の割合が低いということで、
OECDの中で最低となっています。

大学への公的支出(GDP比)の国際比較

Education at a Glance 2016 - Indicators B2より著者作成)

この、大学における家計支出負担が大きいことは
OECDの日本カントリーノートでも明確に指摘されています。

私的財源は、高等教育段階で特に重要であり、同段階での総教育支出のうち私費負担で賄われる割合は 65%に達する。これは OECD 平均 30%の 2 倍以上である。日本は、高等教育段階での授業料が OECD 加盟国の中で最も高い国の一つであり、特に私立教育機関に在学する者が支払う授業料が高い。さらに、高等教育機関に対する教育支出の 51%は家計負担によるものである(OECD 平均 21%を大きく上回る)。このことは学生及びその家族に非常に重い経済的負担を生じさせる。日本では、過去 10 年で、公的貸与補助を受ける高等教育機関の学生数は50%余り増加している。それにもかかわらず、学生支援制度の整備が十分でないために、貸与補助を受ける学生の割合は、同程度の授業料を徴収する国に比べ依然として低い。日本は、高等教育機関に対する在学者 1 人当たり年間公財政支出が少なく、6,855 米ドルである。OECD平均は日本よりも 40%以上高く、9,719 米ドルである。

なお、就学前教育(いわゆる、幼稚園)の
私的負担が大きいことも指摘されており
大学と共にこちらも大きな課題となっています。

幼稚園の場合、資産を形成する前段階での支出になるので
感覚的には大学同様、結構キツイと思います。

家計支出における教育費は?

国際比較のデータから
就学前および大学における公費支出が少ない
=家計支出が大きいことを見てきましたが、
実際の教育費支出はどうなっているんでしょうか。

こちらもデータで見ていきましょう。
国内のデータです。

年間の平均学校教育費

公立 私立
小学校 10 93
中学校 17 106
高校 24 74
大学 54 79

(単位:万円)

(小中高は平成26年度子供の学習費調査(文部科学省)より、学校給食費含む
大学は暮らしと金融なんでもデータ平成26年度版(知るぽると)の年間授業料。著者作成)

この数字だけでは少々わかりづらいですが、
文科省はモデルケースとして
幼稚園から高校まですべて公立の場合で
学習費総額が523万円、
すべて私立の場合で1770万円と
試算しています。

大学進学となればこれにさらに教育費が加算され、
自宅から通うにしても国立大学は496万円、
私立理系では771万円の加算となります。

トータル約1,000万円から2,500万円ぐらいは
子供一人の学習費として用意しておかないと
いけない計算です。

私立校の学費がかさむのは仕方がないとして、
公立ではやはり大学が突出していますね。

大学の家計支出が大きいのは、先程のOECDのデータから
公費負担割合の低さが大きな要因と言えそうです。

今後の教育費の動向は?

このような高額の教育費を負担しないといけないのが、
日本の特徴です。

では、今後教育費はどうなっていくんでしょうか。

あまり大風呂敷を広げてしまうと
話が発散してしまいそうなので
公立でも費用負担が大きい
大学に焦点を絞りましょう。

国立大学の年間授業料は、
一貫して上昇しています。

国立大学の年間授業料の推移(万円)

近年は高止まりのようですが、
そのためか、国立大学の授業料を
上げようという議論も活発なようです。

授業料を上げることで大学教育の質が高まり、
その結果として優秀な学生が
社会に出ていくということであれば
それは立派な議論かと思います。

一方で、授業料は物価上昇率から
かなりかけ離れたペースで上昇していますから、
授業料を上げても教育の質が高まらないなら
それは粗悪な商業主義でしょう。

私立大学はともかくとして、
公立大学でそのようなことがあっては
国民は納得できません。

なお、大学への支出は全体で見ればOECD平均であることは
先程確かめましたので、国際的に見て授業料が低すぎる
(だからもっと上げないといけない)という議論は
難しいと思います。

ですので、上げるというなら教育の質の向上と
セットにする必要がありますね。

まぁここでは大学の質の話までは深く踏み込めませんが、
今後さらに授業料が上がるということであれば
さらなる家計の負担増となっていきますので要注意です。

今後の教育費公的負担はどうなる?

一方で、公的負担を増やして
(=家計の負担を減らして)いこうじゃないか
という議論も行われています。

これはOECDの統計データから見ても
至極妥当な議論かと思います。

例えば最近では、小泉進次郎氏が発言して話題となった
「こども保険」などの案があります。

「こども保険」とは? 小泉進次郎氏ら、保育無償化の財源に提案|HUFFPOST

こども保険は厳密には公費負担ではないですが、
社会全体で子供の教育費、養育費を支えようというのが
提案の骨子です。

また、たとえばこちらの記事
教育投資の財源は「こども保険」より「教育国債」の筋がいい|DOL

では国債で教育費をまかない、
将来世代の収入増と税収増で
それを回収するというアイデア。

こども保険のような「共助」ではなく、
国債ですからまさに公費負担。

高橋先生は財政破綻しない論者で、
当然国債でまかなってOKという立場です。

いずれも実現可能性も含めてまだまだこれからですが、
就学前から大学までの教育が無償化したり、
手当等が増えるということであれば
家計負担の大きい教育費が幾分ましになり、
子育て層への支援、さらには少子化に歯止めがかかれば
理想ですね。

それにしても、国の負債が増えるから
教育国債は反対という財務省の意見にはがっかりです。

国の負債が多いのは確かですが、
だからといって国の未来を担う子供たちへの
教育支出が出来ないというのは
長い目で見て亡国の発想でしょう。

教育というのはその国の国力に直結しますので
借金で首が回らないというのであれば、
むしろ逆に教育への投資を増やさないと
いけないはずなんですけどね…。

財務省の官僚殿には、是非、日本が誇る古典である
「学問のすすめ」を読んでいただきたいと思います。

財務省官僚が、日銀券の顔になっている人の
著書を理解されていないとなれば
笑い話にもならないでしょう。

もし、教育国債に反対する財務官僚の目の前に
福沢諭吉がいたとしたら、どんな議論になることでしょうか。

想像するだに楽しそうですが、ま、それは余談として
今のところ、教育の無償化などの議論は流動的ですので
従来通り支出があるとしてライフプランを組み、
将来に備えておくべきだと思います。

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