年金制度改正法で在職老齢年金はどう変わる?

こんにちは、林FP事務所です。

以前のこちらの記事で、在職老齢年金や年金受給開始年齢についての改正案について解説しました。

年金の受給はいつからがベスト?いつまで働けば良い?制度見直し内容をチェックしよう。

この内容が結局どう決まったかについて、今回は特に在職老齢年金の改正について説明します。また、この改正の背景のひとつとされている「女性の就労」についても考察しています。

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まずは在職老齢年金についておさらい

会社員など、厚生年金に加入し給与を得ている方が60歳を超えても働き続け、老齢厚生年金も受給しながら給与も得ることになった場合、その受給額が一定額を超えると老齢厚生年金が一部(あるいは全額)減額されてしまいます。これを在職老齢年金の支給停止といいます。

現在の制度では、「厚生年金+収入」が

  • 60~64歳(低在労) 月28万円以上、
  • 65歳以上(高在労) 月47万円以上

になると年金が減額になります。

厚生労働省資料によれば、60~64歳の支給停止対象者数(少額でも減額される人)は2022年度末推計で約37万人で、この制度の対象となる人(厚生老齢年金と給与をもらう人)の51%となっています。

つまり60歳になっても退職していない人の半分程度が月28万円以上を得、老齢厚生年金が減っているということになります。
これでは、より長く働こうという意欲が削がれてしまいますよね。

実際に、60~64歳の支給停止については、

就労に与える影響が一定程度確認されている

引用元:厚生労働省・年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要(PDF)(2020年9月17日アクセス)

とされています。

前回の記事では、この月28万円・月47万円の支給停止基準額をいくらまで引き上げるかということで、議論がなされている状況をお伝えしました。

当初案はすべての年代での支給停止基準額が62万円まで引きあげとのことでしたが、年金財政とのバランスから51万円までになったとのことでした。

※上図の10月当初案・11月13日修正案はいずれも2019年です。

結局、支給停止基準額はどうなったのか?

今年6月5日に公布された年金制度改正法により、2022(令和4)年4月から、在職老齢年金の支給停止額は、

  • 60~64歳(低在労) 月47万円に引き上げ
  • 65歳以上(高在労) 月47万円に据え置き

となります。

結果的に、労働意欲を後押しする効果を見込み60~64歳以上のみ引き上げとなったのです。

当初案から比べると小幅な引き上げとはなりましたが、低在労の基準額が19万円引き上げになったことは、60歳台の働き方を考えている年代にとっては、大きな意味があると思われます。

資料によれば、この引き上げによって、現行制度では51%だった支給停止率が15%になると推計されています。

また、月47万円という金額は、現役男子被保険者の平均月収(ボーナス年間額の1/12も含める)を基準としているということから、64歳までは今まで通りの収入を得ることを支援すると読み取れますね。

また、資料によれば、今回の改正の背景として、先ほどの「60~64歳の支給停止が就労意欲に影響を及ぼしている」ことのほかに

2030年度まで支給開始年齢の引き上げが続く女性の就労を支援する

引用元:厚生労働省・年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要(PDF)(2020年9月17日アクセス)

ということが挙げれています。

女性の就労も後押しするということなのですが、今回の改正は女性の就労を支援することにつながるのでしょうか。女性の就労状況やその変化について、考えてみたいと思います。

女性の就労率の推移で驚いたこととは?

保育園の待機児童問題やそれに対する方策のニュースを耳にすると、子育て世代の女性の就労率は増え続けているという印象があります。

女性の就業率の変化を表した統計を見てみましょう。


内閣府 男女共同参画白書平成29年版より抜粋
(2020年9月17日アクセス)

まず、右側のグラフを見ると、昭和61年の赤線のグラフはいわゆるM字カーブになっていて、30歳台前半の子育て時期にいったん就労を離れ、子育てが落ち着くとまた働き始めるといった傾向が顕著です。しかし平成28年のグラフではかなりMの字が緩やかになっており、出産をしても退職せずそのまま産休、育休を取るなどで仕事を続けるケースが増えていることがわかります。

子育て世代の女性の就労率はやはり上がり続けているということですね。

では、左側のグラフを見てみると、平成18年から24年までで最も就労率が増加しているのが実は60~64歳、次いで55~59歳であるということがわかります。

子育て世代の就労も増えていますが、在職老齢年金を受ける世代の就労もどんどん増えているのです。

実際の就労率は55~59歳が69.3%、60~64歳は50.8%と、子育て世代に比べれば低い数字にはなっていますが、伸びという面では増加が著しく、今後も上がっていくことが期待できます。

なので、今回の年金法改正でさらに増進を目指しているということもわかります。

この世代の就労率増加は、女性の社会進出が進み、定年も延長になる企業も増えているといった背景が考えられますが、このところ不安視されつつある老後資金の準備に、女性の収入への期待が大きくなっているとも思われます。

しかし、50代からの女性は、個人差はあれど多くの方は大きな体調の変化を迎えます。また家庭の中では子育ては終了していても次に両親の介護が必要になってくる時期でもあります。

収入も期待され、体調も変化し、プライベートでも多忙になってくる中高年の女性は、実は大変な局面にあるのではないでしょうか。ライフワークバランスとは言いますが、ライフもワークも両方とも頑張りすぎる傾向になるのではないでしょうか。

就労を支援する在職老齢年金の改正ももちろんですが、社会や家庭で、ライフもワークもともに男女隔たりなく支えあうような環境が整っていってほしいものです。権利を主張する、収入に期待するばかりではなく、思いやり、支えあう、そのような意識で仕事や家庭生活を送っていきたいものですね。

まとめ

高齢化に伴う働く期間の長期化が、在職老齢年金制度の見直しなど年金制度の改正につながり、また女性の就労にも今後さらに効果を及ぼしていくことがわかりました。

こういった制度の変化は今後も求められるようになってくるでしょう。

変化の多い今、いつまで働くのか?働き方はどうするのが良い?どの年代も迷いがありますが、制度の変化をチェックしつつ時々でもライフプランを考えていくことが大切でしょう。

参照:厚生労働省・年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要(PDF)

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