住宅購入のコロナによる影響は?工期が遅れてしまった場合、支援制度はどうなる?
こんにちは。林FP事務所です。
今回の新型コロナウイルス感染症の影響で予期せぬことが色々と起こり、生活のあり方や働き方、お金の動き、様々な面で変化が起きました。
特に住宅購入をされた、される方は、昨年の消費税増税時に拡充されたいくつかの制度について、コロナの影響がどう関係してくるのか不安になる場合もあるかと思います。それが現在どうなっているのかまとめてみました。
令和元年10月からの増税時に住宅の着工数が冷え込むのを防ぐため拡充された制度とそのスケジュールはこちらです。
制度によっては、もう終了を迎えたり拡充額が下がったりしているのですが、コロナの影響で遅れてしまってもまだ間に合う場合もあるようです。
2020年7月現在の状況を確認しておきましょう。
住宅ローン減税制度
住宅ローン減税制度は住宅の新築、リフォームを行う際、住宅ローンを利用していれば受けられる所得税の減税制度です。正式な名称は「住宅借入金等特別控除」といいます。
参照:国税庁HP・No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合
年末時点のローン残高の1%が減税の対象となり(※期間が13年間の場合は金額が異なります)、所得税からその対象額がそのまま減税されるので、大きな効果があります。
対象額は40万円以下(認定住宅なら50万円以下)と上限が決められています。また、居住時期や住宅の床面積や所得額などの要件があるので確認が必要です。
消費増税前後で拡充があった大きなポイントは、控除期間が10年間から13年間に延長されたことにあります。
13年間の控除が受けられる場合、最初の10年間の対象額ははこれまでと同様、ローン残高の1%ですが、11年目からの3年間は異なる計算方法で軽減額を決定します。
次のいずれか少ない額が控除限度額
①年末残高等〔上限4,000万円〕×1%
②(住宅取得等対価の額-消費税額〔上限4,000万円〕)×2%÷3
(注) 「住宅取得等対価の額」は、補助金及び住宅取得等資金の贈与の額を控除しないこととした金額をいいます。引用元:国税庁HP・住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(2020年7月9日アクセス)
控除期間が3年間延びたことによって減税期間が増え、消費税が増えた分の負担が和らぐことになります。
では、この住宅ローン控除制度の新型コロナ感染症による影響はあるのでしょうか?
増税時には、13年間の控除を受けるためには、
- 消費税10%で住宅を購入すること
令和元年10月1日~令和2年12月31日までに入居すること
という要件がありました。
しかし、コロナの影響で入居が遅れてしまった場合に備え、要件を満たせば入居の期限が令和3年12月31日まで、1年間緩和されることになりました。
要件はこちらです
(1)一定の期日までに契約が行われていること。
・ 注文住宅を新築する場合:令和2年9月末
・ 分譲住宅・既存住宅を取得する場合、増改築等をする場合:令和2年11月末
(2)新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響によって、注文住宅、分譲住宅、既存住宅又は増改築等を行った住宅への入居が遅れたこと。引用元:国土交通省・住宅ローン減税の適用要件の弾力化についてPDF(新型コロナウイルス感染症関係)(2020年7月9日アクセス)
工事が遅れてしまったり、止まってしまったりすると当然不安になりますが、特別措置があることで13年間の控除が変わらず受けられると知れば心強いですね。
すまい給付金
「すまい給付金」は2014年の消費税の引き上げ時に自分で住む住宅を取得した方の負担を軽減する目的でできた補助金の制度です。
一定の収入以下の人が受けられ、要件を満たせば新築、中古でも補助を受けることができます。
現在は消費税率が10%なので、収入775万円以下の人がその収入に応じて10万円~50万円の給付を受けることができます。
住まい給付金を受給できる条件は、
- 住宅ローンを受けていること(50歳以上など現金取得でも可能な場合があります)
- 床面積が50平方メートル以上であること
- 第三者機関の検査を受けた住宅であること があげられます。
また収入額の区分には扶養人数などがかかわっています。具体的には上記のホームページでシミュレーションできます。
手続きは住宅の引き渡しを受けてから1年以内にすまい給付金事務局へ郵送するかすまい給付金申請窓口で行います。
すまい給付金の制度スケジュールは、もともと令和3年12月まで(引き渡され入居完了)で終了も先であるためか、コロナ感染症による変更は今のところはありません。
しかし、現在窓口や郵送申請も規模を縮小しており、提出の際には書類の確認を徹底する、窓口の予約を行うなどが必要になっています。
次世代住宅ポイント制度
こちらは、省エネ、耐久性、耐震性、バリアフリー性などが高い住宅の新築やリフォームに対し、様々な商品と交換できるポイントが付く制度で、昨年の増税後に新たに導入されました。
新築であれば1戸当たり最高35万ポイントを得、ポイントを様々な商品に交換することが出来ます。
その期限が、申請は令和2年の3月31日まで、商品交換は令和2年の9月30日までとあっており、すでに締め切っている予定だったのですが、
コロナ感染症の影響で、下記のような事情で3月末までに申請が出来ず、令和2年4月7日~8月31日までに契約を行った場合、ポイントの申請が可能となりました。
申請は6月1日から開始しています。
・事業者から受注、契約を断られた
・事業者との契約を解除した
・引渡し時期の見込みが立たず、契約をあきらめた
・本制度を利用できる見込みが立たず、契約をあきらめた引用元:次世代住宅ポイント・新型コロナウイルス感染症対応(2020年7月9日アクセス)
住宅取得資金贈与の特例
父母や祖父母などの直系尊属から、住宅の新築・取得又は増改築等のための資金を贈与により受けた場合、一定額まで贈与税が非課税になる制度です。
消費税8%時には非課税枠が最大1,200万円だったのが、増税後から最大3,000万円に拡充され、その後は段階的に減っていくことになります。(冒頭の表を参照)
参照:国税庁HP・直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
この特例を受けるためには、物件の新築や取得、居住について期限が定められています。
そして、「災害に基因するやむを得ない事情」により、取得期限までに新築等ができな かった場合又は居住期限までに居住ができなかった場合には、それぞれの期限が1年延長され、特例の適用を受けることができます(租税特別措置法 70 条の2第 10 項、第 11 項)とされています。
今回のコロナ感染症での影響で工期の遅れなどでやむを得ない事情があれば、先ほどの「災害に基因するやむを得ない事情」と認められ時期が1年延長となる可能性があります。
ただこちらは個々の事情を所轄の税務署に相談する必要があるでしょう。
参照:国税庁・「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」PDF
まとめ
コロナウイルス感染症の影響で、住宅購入という大きなイベントでお金が動くタイミングが当たってしまうとどう動くのが正しいのかわからなくなってしまうこともあるかと思います。
しかし、個々の制度を調べるとわかると通り、それぞれに不測の事態に対しての救済措置が設けられていることがわかりました。提出する書類が増えるなど煩雑なこともありますが、本来受けられるべき緩和策はそのまま受けることが出来そうです。
住宅購入に限らず、非常時にも慌てず、まず情報収集をしっかりとする、専門家に聞くなど、落ち着いて向き合うことが大切ですね。