悪しき慣習だった「分配金」込の損益把握が可能に。本気を出してきた法改正の裏に、日本の危機感?

12月から改正投資信託法が施行されることが
日経電子版の記事に掲載されています。

記事には分配金込のトータルリターンや、
運用報告書の簡易化等が記載
されていますが
ポイントはそれ以外にもあります。

投資信託の販売や取り扱いがどのように変わるのか?
要点を整理しておきます。

(写真は霞ヶ関、BlackRiver提供 CC)

投資信託法改正のポイント

12/1に施行される投資信託法改正のうち、個人投資家に関係するものの
ポイントは5つあります。

詳細については、こちらのPDFがわかりやすくてお勧めです。
投資信託法制の見直しについてーワーキンググループ最終報告ー|PWC

以下、最終報告をベースに要点を抜粋します。

1. 運用報告書の改善

「運用報告書は見にくくて、結局要点がわからない!」

と思っていた方に朗報です。
12月からは交付版(簡易)と、全体版(詳細)の2種類になります。

交付版でも、他の投資信託との比較が可能になり、
グラフや図を活用して平易に、とされています。

今まで、確かに利益は出ているけど、
他のファンドよりどれぐらい優れているのかわかりにくい!
などという状況でしたが、これが改善されるということですね。

ただ、良心的なファンドであれば「月報(マンスリーレポート)」で
既に交付版と同様の報告をしているはずですので、
これからもそうした良心的なファンドを中心に選ぶべきでしょう。

まぁ、これが義務でなかったということ自体、
日本の投資環境整備が遅れていた証拠なのですが…

2. トータルリターン把握のための定期的通知制度

今回の目玉の一つで、
諸悪の根源だった過剰な分配金ファンドの
撲滅に一役かう改正と言えます。

日本の分配金はそれが利益なのか元本なのかが非常にわかりにくく、
高頻度の分配金ファンドは、それを正しく理解している投資家からは
批判の的でした。

今回の改正により「今までの分配金を含めたトータルの実質損益」
を把握することができますから、投資家にとって
本当にメリットがあるファンドかどうかを見極めやすくなります。

なお、トータルリターンの計算は
「計算時点の評価金額+累計分配金受取額+累計換金金額-累計買付金額」
となっていますが、こんなのよっぽど暇な投資家でなければ、
自分で計算するなんて無理です。

今後は自ら計算しなくとも、定期的に報告を受けられます。

恐らく、短期的には

「こんなに分配金をもらってるのに、なんでトータル損失なんだ!」

なんていう声も上がってくるだろうと思いますが、
これは正しい反応(修正)でしょう。

高分配ファンドがランキング上位を占めるような状態は、
1日も早く改善されてほしいものです。

3. 販売手数料・信託報酬等に関する説明の充実

確かに手数料やランニングコストに関しては、
一般にはよく理解されていないと思います。

が、これはなんとなくお題目だけのような感じ。
販売時に、説明資料が1枚増える程度かと推察されます。

4. 販売・勧誘時等におけるリスク等についての情報提供の充実

今まで、リスクについては報告があったりなかったりと、
ファンドによって対応がバラバラでしたが、
今後はある程度の統一表記と、リスク提示の詳細化が図られるようです。

リスクやリターンの表記はルールを統一しないと比較できないので
これには少し期待しています。

また、リスクを把握せずに投資するのは危険極まりなく、
過去データとは言え簡便に把握できるようになるのは
メリットが大きいです。

5. 運用財産の内容についての制限

これもリスクに関する内容です。

現在、オプション等のデリバティブや為替ヘッジなど、
2段階、3段階に組み合わされた複雑な商品も多数販売されています。

これらのリスク把握がある程度きちんとできるようにしましょう、
という内容です。

ただ、個人的には「複雑な商品には手を出さない」
というのが基本だと思いますので、
ここを改善することによるメリットは
あまりないと思っています。

金融庁はどうしてここまで踏み込んでくるのか?

今回の改正では今まで野放しになっていた過剰な分配金ファンドに
ようやくメスが入るわけで、まずは個人にとって嬉しいことです。

ただ、遅ればせながらこうした規制が導入されることの
元々の背景として、「もう無い袖は振れないよ」
ということがあるように思います。

ちなみに生産年齢人口1人に対する老齢人口の割合は
2010年で0.36人ですが、
2050年には0.75人と倍以上になります。

もちろんこれだけで未来を決めるつけるわけにはいきませんが、
現役世代が同時期の高齢者を負担する現状の制度を維持するならば、
30〜40代の現在働き盛りの人にとって現状の年金などは
半分にまで目減りすることも想定しないといけません。

団塊の世代など、現在であればまだ、老後保障が充実していると言えますが
今後20年後、30年後の老後保障が今と同じレベルである可能性は
かなり低いと言わざるをえないでしょう。

それでもなお、資産形成の重要性に気づいていない人が
大多数、いるわけです。

これはもちろん個人の意識の問題が大きいですが、
悪しき慣習を温存してきた業界にも問題があるでしょう。

そんなわけで、

もう分配金を餌に高コストなファンドを売ってる場合じゃないんだよ。
もっと良心的なファンドを増やして、堅実に資産形成してもらわないと!

というのが、金融庁から国民へのメッセージではないかと、
個人的には思っています。

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