個人データ銀行で、不労所得が可能になる!?
今日の日経新聞朝刊にこちらの
興味深い記事が掲載されました。
三菱UFJ信託銀が「個人データ銀行」 企業に仲介 【イブニングスクープ】19年にも(日経電子版)
個人データを預けて収益を受け取れる!?
なにやら面白そうな話ですね。
目次(タップでジャンプ)
個人データ銀行ができる社会的背景とは?
「え?個人データがお金になるの?」
「なんだか怪しい話じゃない?」
と思われるかもしれませんが
これには個人データに関する世界的な流れがあり
実はまっとうな収益と言えます。
逆に言えば今まではこの収益を受け取らず
検索サービス等無料のサービスが
その対価としてなんとなく容認されてきた
ということが言えます。
少し詳しく見ていきましょう。
GDPRの発行、施行が契機
冒頭の記事にも出てくるキーワードですが
GDPR(ジーディーピーアール、一般データ保護規則)
というのはご存知でしょうか?
昨今の個人データの動向を探る上で
GDPRを外すことはできません。
GDPRは2016年発行、2018年5月に施行した
EEA(EU+EFTA3国)域内に適用される
EU版個人情報保護法ともいうべき法律です。
EUなんて遠い国のことが、なんで日本に関係あるの?
と思われるかもしれませんが
それが大いにあるんです。
実はGDPRはEEA域内の個人データについて
原則域外への持ち出しを禁止しています。
米国のIT企業は個人データを
本国に収集、処理していますので
この影響はかなり大きなものです。
米国のIT巨人(グーグル、アマゾン、Facebook、…)が
その利益の源泉にしている個人情報を
野放図に収集し続けることに業を煮やし
元々あった保護規定を強化、一般化したものがGDPR、
という経緯があるんですね。
グーグルは、あなたも毎日使っていますよね?
そう、生活に密着したサービスが
今後大幅に影響を受ける可能性が
あるというわけです。
違反した場合には巨額の制裁金、
最大2,000万ユーロ(約25億円)か
売上高の4%のいずれか大きい方が課されますから
いくら大金持ちのIT巨人とはいえ
真剣に対応しないわけにはいきません。
仮に制裁金を払えたとしても
実際に制裁を受ければ企業のブランドや信頼が傷つき
その後のビジネスに影響を与えてしまいます。
こうした背景から、例えば
グーグルはGDPR対応で広告ポリシーを改定してますし
Facebookはシェアした投稿をユーザー側で
削除できる仕組みを既に実現するなどの
対策が活発化しています。
さて、このGDPRは巨額の制裁金だけでなく
個人データを扱う権利を個人に大幅に認めている
という特徴もあります。
「忘れられる権利」というのは聞いたことがあるかもしれませんが
その気になれば「私のデータを全部削除して」
とグーグルに言って消してもらうことができます。
またそのデータを他の企業に移す権利
(ポータビリティ権)なども認めていますので
データを扱う主導権がIT企業から
一気に個人に移ったと言えるでしょう。
もちろん、GDPRはEEA域内の法律ですし
(ただし域外にも効力を及ぼしうる)
多くの人は利便性と引き換えに
これからも個人データを提供し続けるでしょうけど
世界的に大きな節目を迎えていることは確かです。
個人データ銀行を介した共存共栄の道?
GDPRを契機にIT巨人が野放図に
個人データを収集することが
今後難しくなっていくことも予想されます。
もし個人がGDPR等を盾にしてデータの主権を主張し
一切個人データを提供しなくなれば、いくらIT巨人と言えど
そのビジネスモデルの根幹が揺らぎますよね。
そこで登場するのが
「お金で解決しよう」
という発想です。
ザ、シンプルですね。
日経新聞の記事タイトルは「個人データ銀行」ですが
去年の春に政府のIT総合戦略本部の検討会が
「情報銀行構想」を打ち出しており
三菱UFJ信託の個人データ銀行は
その情報銀行の一つという位置づけです。
三菱UFJ信託銀行の「情報データ銀行」
が誕生しようとしている背景には
こうした流れが背景にあるんですね。
「個人データは個人のもの。
使いたいなら、対価を払ってください。」
と、堂々と個人が言える仕組みが
整う機運が高まっていると言えるでしょう。
個人的には、動きが早いなという印象です。
個人データ運用による新しい収益源(副収入)の可能性
今まで個人データから利益を欲しいままにしていた
IT企業は対応が必要ですが
個人としては逆に選択肢が増えて
チャンスが生まれます。
個人データを提供したくない人は
粛々とデータを回収すればいいですし
個人データを「運用」したい人は
個人データ銀行に預けて運用すればいいでしょう。
ATM手数料で吹き飛んでしまうような利息しかつかない
銀行預金に比べれば、1企業毎に毎月報酬が得られる
「個人データ運用」にはかなりの魅力が
あるように感じるはずです。
信託銀行が取り組む意味
個人データは今後
個人が所有する資産としての
性格が強くなっていくでしょう。
しかも個人データという資産は
個人が「普段行動するだけで」
どんどん増えていく性質があります。
この個人データを運用して収益を生む仕組み…
投資信託の積立投資に似ていませんか?
投資信託には販売、運用、信託を担う
3つの金融機関が登場しています。
その中の信託銀行が個人データ銀行として
まず名乗りを上げた事には
やはり意味があると思います。
信託銀行に個人データを預け
個人が「運用指図者」となるような
イメージですね。
個人データが個人の資産となり
今後収益を生むとしたら?
これは投資家としても
目が離せませんよね。
また、実際の運用がどうなるか詳細は分かりませんが
一旦個人データ銀行に集めて匿名化、無名化した上で
提供するのであれば、グーグルやFacebookに
個別に野放図に収集されるよりは安心感が高まりますね。
ただ、記事の図だけでは
匿名化、無名化されるかどうかまでは
分かりませんが…
でも個人データ銀行にはこうした役割も
あるのではないでしょうか?
ただし、IT企業が個人データを買う形になりますから
当然今までよりも「コスト」がかかるようになります。
そのコストは一体誰が払うのか?
という問題が出てきます。
利用者が払うのであれば
今まで無料で使えたサービスが
今後は有料化していく可能性もあるわけですね。
僕個人的には、個人データに価値があるのはもちろん
コンテンツやサービス提供にもコストがかかっているわけですから
きちんと対価を払う方がスッキリするとは思います。
結局無料というのは一見有利に見えて
実際には物事の本質を見えなくしてしまうわけです。
まだまだ不確定要素が多く
個人データ銀行もまだ正式には始まっていませんが
GDPR始め個人データの復権は世界的な流れであり
この動きが減速することはないでしょう。
今後も引き続きウォッチ
していきたいと思います。