年金は繰り上げてもらうのが得か損か?まずは理論的に押さえてみる。
こんにちは。林FP事務所の林です。
年金(老齢基礎年金)は、申請すれば
繰り上げて支給してもらうことが可能ですが、
その代わりとして支給額が一定割合減らされます。
前倒しでもらうのは、
果たして得なのでしょうか、損なのでしょうか。
試算してみました。
年金の繰り上げ支給の仕組み
基礎年金(老齢基礎年金)は、繰り上げ支給を請求することが出来ます。
請求するための条件としては
- 保険料納付済期間+免除期間+合算対象期間が25年以上
- 60歳以上65歳未満
- 任意加入被保険者ではない
があります。
仮に繰り上げ支給が認められた場合、
繰り上げた月数に0.5%を掛けた率が「減給」され、
その減給率が一生涯続きます。
ただしその分前倒しでもらえるわけですから、
65歳で亡くなるとまるまるプラスですし、
運用するなら利回りによっては±が変動します。
ということは、
- 繰上げ請求のタイミング
- 運用利回り
- 受給期間(死亡のタイミング)
によって、損得が様々に変化するということが分かります。
パラメータが3つあると表にしづらいので
死亡のタイミングは60歳時点での男女の平均余命の平均
を60に足して81歳とします(参考:平成 24 年簡易生命表)。
また、比較の条件を簡単にするために、運用と取り崩しのルールも加えます。
以上の条件をまとめると
- 81歳まで生きることを想定
- 繰り上げ受給しても65歳まで手を付けず、想定利回りで運用する
- 65歳以降、繰り上げの有無に関係なく65歳から繰り上げ無し支給額を使用する
- 65歳以降、繰り上げでもらった資産を運用しながら取り崩す
です。
計算方法は利回りと積み立て、取崩しの関係も参考にしてください
この条件のもとで、損得を計算した表が以下。
受給開始年齢 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
利回り | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 |
0.0% | -1.30 | -0.80 | -0.42 | -0.16 | -0.02 | 0.00 |
0.2% | -1.23 | -0.74 | -0.37 | -0.13 | 0.00 | 0.00 |
0.4% | -1.15 | -0.68 | -0.33 | -0.10 | 0.01 | 0.00 |
0.6% | -1.07 | -0.61 | -0.28 | -0.06 | 0.03 | 0.00 |
0.8% | -1.00 | -0.55 | -0.23 | -0.03 | 0.05 | 0.00 |
1.0% | -0.92 | -0.49 | -0.18 | 0.00 | 0.06 | 0.00 |
1.5% | -0.72 | -0.32 | -0.05 | 0.09 | 0.10 | 0.00 |
2.0% | -0.51 | -0.15 | 0.08 | 0.17 | 0.15 | 0.00 |
2.5% | -0.29 | 0.03 | 0.21 | 0.26 | 0.19 | 0.00 |
3.0% | -0.07 | 0.21 | 0.35 | 0.36 | 0.24 | 0.00 |
3.5% | 0.17 | 0.40 | 0.49 | 0.45 | 0.28 | 0.00 |
4.0% | 0.41 | 0.59 | 0.63 | 0.55 | 0.33 | 0.00 |
4.5% | 0.65 | 0.79 | 0.78 | 0.64 | 0.38 | 0.00 |
5.0% | 0.91 | 1.00 | 0.94 | 0.74 | 0.43 | 0.00 |
7.5% | 2.32 | 2.11 | 1.76 | 1.28 | 0.69 | 0.00 |
10.0% | 3.94 | 3.37 | 2.67 | 1.86 | 0.96 | 0.00 |
表の数字は各組み合わせにおける損得の「度合い」で、
繰り上げ無し(65歳から)での受給年額を基準に
その何倍損か得かを示しています。
例えば数値が1.5なら81歳時点で1.5年分プラス、
−1.0なら同1年分マイナス、という意味です。
そして黄色のマークをつけている所は最も得になる組み合わせで、
利回りが増える毎に早くもらった方が得になっていく
ことが分かりました。
もちろん前提条件を変えれば最適値も変わってきますが
繰り上げ受給を考える余地は十分にありそうだ、
ということが分かっただけでも収穫です。
1%以下の運用利回りでも1年前倒しした方が得になる、
というのは意外ですね。
これなら将来金利が上がるとすれば
十分検討の余地がありますし、
今でも変動利付国債で運用すれば
わずかですがプラスになる可能性があります。
繰り上げ受給まとめ
前提条件を一つにしぼり、
運用益や年金受給の税金の影響は無視して
ざっくりと計算してみました。
実際にはもっと正確な計算が必要だと思いますが
少なくとも検討の余地なし、とはならないはずです。
また、繰り上げ受給の反対に、
繰り下げ受給というのもあります。
繰り下げ(後のばし)した分、
これは繰り下げた月数x0.7%「上乗せ」されて
支給されるものです。
こちらは81歳まで生きると確実に
プラスになります。
ただし繰り下げるまでの生活費原資が必要ですので、
資産を取り崩せる人(借金せずに済む人)が対象になるでしょうね。
やっぱり資産がある方がいろいろと有利になるなぁ、
ということで結論としてはコツコツ資産運用していきましょう。
以上、年金小話でした。