共通KPIの比較で金融機関の「顧客本位度」が丸裸に!?
金融機関の顧客の収益度を測る指標として、金融庁が提示している「共通KPI」というのがあります。
2018年11月時点で39機関が公開しており、具体的に比較してみました。
さて上位の金融機関はどこだと思いますか?
目次(タップでジャンプ)
共通KPIとは?
共通KPIについての基礎知識について、まずはこちらの記事で学んでくださいね。
共通KPIとは?資産運用の前に必ず知っておきたい、どの投信を選ぶべきかを比較できる共通KPIを学ぶ
ざっくりいうと、共通KPIとは金融機関同士を比較することができる共通的な指標で
- 運用損益別顧客比率
- 投資信託預り残高上位20銘柄のコスト・リターン
- 投資信託預り残高上位20銘柄のリスク・リターン
の3つがあります。
このうち、最も注目されたのが一番上の「運用損益別顧客比率」です。
前回金融庁が発表した内容では、リスク資産を持つ銀行顧客の半数以上が含み損を抱えているという結果でした。
増える共通KPI公開金融機関
(「顧客本位の業務運営に関する原則」を採択し、取組方針・KPIを公表した金融事業者のリストの公表について(平成30年11月7日更新)|金融庁)
この中で、
自主的なKPIを公表している金融事業者は、6月末以降、69社増加し、416社でした。また、共通KPIを公表した金融事業者は、39社でした。
とあります。
自主的なKPIというのは、金融機関独自のKPIで、金融機関同士の比較ができないものです。
それでも公表しないよりはいい、ということで金融庁も「自主的KPIの好事例」を公開しています。
さらに、6月に金融庁が公表してから5ヶ月で共通KPIを公表した金融機関は39社にのぼり、今後も増えていく事が予想されます。
自主的KPIにせよ共通KPIにせよ公開の義務はありませんから、相変わらず公開しない金融機関もあるかと思いますが、顧客に十分な情報を提供する意思が無いということですから、これは「顧客本位の業務運営」から外れるものです。
今後、そういう金融機関が出てくるなら、取引しないようにすればいいだけです。
11月時点で共通KPIを公開している金融機関と共通KPIの比較
金融庁の公開情報を元に、共通KPIへのリンクをまとめました。各リンクをクリックすると、それぞれの共通KPIが分かります。
また、共通KPIの比較もしていますので、御覧ください。
都市銀行等(10件)
- みずほ銀行の共通KPI
- 三井住友銀行の共通KPI
- 三菱UFJ銀行の共通KPI
- りそな銀行の共通KPI
- SMBC信託銀行の共通KPI
- みずほ信託銀行の共通KPI
- 三井住友信託銀行の共通KPI
- 三菱UFJ信託銀行の共通KPI
- あおぞら銀行の共通KPI
- 新生銀行の共通KPI
地銀、共同組合(11件)
- 青森銀行の共通KPI
- 秋田銀行の共通KPI
- きらぼし銀行の共通KPI
- 近畿大阪銀行の共通KPI
- 関西アーバン銀行の共通KPI
- 中京銀行の共通KPI
- 名古屋銀行の共通KPI
- みなと銀行の共通KPI
- 埼玉りそな銀行の共通KPI
- 京都信用金庫の共通KPI
- 東春信用金庫の共通KPI
証券会社(金商業者)等(15件)
- SMBC日興証券の共通KPI
- SBI証券の共通KPI
- 岡三証券の共通KPI
- 岡三オンライン証券の共通KPI
- カブドットコム証券の共通KPI(筆者確認できず)
- 大和証券の共通KPI
- 東海東京証券の共通KPI
- 野村證券の共通KPI
- マネックス証券の共通KPI
- 丸三証券の共通KPI
- 丸八証券の共通KPI
- みずほ証券の共通KPI
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の共通KPI
- 三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券の共通KPI(2019年1月時点でリンク切れ)
- 楽天証券の共通KPI
独立系投信会社(3件)
さて、共通KPIというからには、共通の土俵で比較できる指標のはずです。
ということで実際に比較してみました。
共通KPIによるコスト・リターンの比較
(クリックで拡大)
まずは各金融機関毎の残高加重平均コスト(以下平均コスト)と、残高加重平均リターン(以下平均リターン)の関係をプロットしました。
単純に考えれば、コストが小さくてリターンが大きい方が嬉しいですので、左下の原点から引いた直線の傾き(上昇)が大きいほど、有利と言えます。
中央斜めに引いた緑のラインは、1%コストをかけたときに10%のリターンとなるラインです。セゾン投信、楽天証券がほぼここに該当しています。
その上位にマネックス証券、コモンズ投信、SBI証券が、そのさらに上、レオス・キャピタルワークスがとんでもないところにいます。笑
レオス・キャピタルワークスはおなじみ「ひふみ投信」の運用・販売会社ですが、TOPIXをベンチマークとした主として日本株式のウェイトが大きい投信です。
ですので、確かにスゴイところにはいますが、相場環境から今回たまたまということも言えますので、これだけで判断しないようにはしましょう。
僕は勝手にSBI証券と楽天証券が近いのかなと思っていましたが、案外マネックス証券が健闘しているのに驚きました。
まぁ、これぐらいは誤差の範囲かもしれませんが。
共通KPIによるリスク・リターンの比較
(クリックで拡大)
シャープレシオとはリターン÷リスクで計算される指標で、投資のパフォーマンス比較によく使われます。
本来シャープレシオは(ポートフォリオリターンー無リスク・リターン※)÷ポートフォリオリスクなんですが、今は世界的に低金利状態ですので今回は無リスク・リターンをゼロとしても、実質的にそれほど誤差はないだろうと想定します。
※無リスク・リターン:各国の国債利回り等
ということで平均リターンを平均リスクで割った簡易シャープレシオを元に、シャープレシオが大きい順に金融機関を並べてみました。
レオス・キャピタルワークスはちょっと例外ですが、次点でSBI証券、ついでコモンズ投信、セゾン投信と並んでいます。
秋田銀行や岡三オンライン証券など、コスト・リターンでは振るわなかった一部の金融機関も上位にランクインしていますね。
コストの問題はあるものの、今後注目すべき金融機関と、言えるかも知れません。
なお、上記グラフを作成したExcelをこちらにおいておきます。
ご活用ください。
共通KPIで分かる「つみたてNISA」のメリット
共通KPIにもまだまだ課題があり、しかも過去の実績でしかないことから100%鵜呑みにするのは危険です。
しかし、これらの比較から、「積立をさせている独立系は総じて強い」という傾向が見えてきます。
独立系の投信に積み立てるかどうかは別にして、つみたてNISAなどの制度を上手に利用して、ご自身のポートフォリオのパフォーマンスを向上させていくのが得策かもしれませんね。
つみたてNISAに関してはこちらの記事もお読みください。
【保存版】2018年から始まるつみたてNISA、10のメリットとデメリット
以上、参考にしてください!
ps.
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