バリュー平均法について、独自にシミュレーションして分かったこと。
![](https://h-fpo.com/wp-content/uploads/2014/07/2014-07-07-14.40.18.png)
こんにちは。林FP事務所の林です。
岡本氏の著書「確定拠出年金 最良の運用術」で紹介されてから、各ブロガーさんで話題になっていたバリュー平均法ですが
独自にシミュレーションしてみました。
結論として一部苦手な局面もあるようで、通常のドルコスト平均法で十分かなと思います。
バリュー平均法の投資シミュレーション
バリュー平均法の詳しい説明については
岡本氏の著書「確定拠出年金 最良の運用術」を
参考にしてください。
著書内でもバリュー平均法のシミュレーションがありますが、
自分でやってみないと納得できない性格のため
独自にシミュレーションしてみました。
1. 右肩上がり1
シミュレーションの条件はこちら。
初期資産、買い付け額が少々大きめですが
シミュレーションぐらいは景気よく行きたいな
と思いましてw
以下ご自身の状況に合わせて額を読み替えてください。
まず青線の値動き(左軸)をする資産に、
バリュー経路(右軸)に沿ってバリュー平均法を使って投資する場合を考えます。
![2014-07-06 13.25.12](https://h-fpo.com/wp-content/uploads/2014/07/2014-07-06-13.25.12.png)
投資の損益率はこちら。
![2014-07-06 13.25.38](https://h-fpo.com/wp-content/uploads/2014/07/2014-07-06-13.25.38.png)
ここでいう損益率とは、初期資産6千万に対して、
±何%になったか、というもの。
例えば初回全額投入(赤)のパフォーマンスが
+59%ですが、この場合
資産は 6千万x1.59=9千5百万
になったということです。
あれ?
ドルコストがトップ、バリュー平均法が2番手です。
なんだか、バリュー平均法ってそんなにすごくないのかな?
と思いますね…。
2. 右肩上がり2
もしかしたら期間が短いせいかと思い、
もうすこし期間を延ばして20回投資します。
値動きもジグザグしながら平均的に右肩上がりとし、
バリュー経路は8千万までとしました。
![2014-07-06 13.26.03](https://h-fpo.com/wp-content/uploads/2014/07/2014-07-06-13.26.03.png)
ドルコスト平均法は初期資産を
20回に分けて投入していきます。
![2014-07-06 13.27.14](https://h-fpo.com/wp-content/uploads/2014/07/2014-07-06-13.27.14.png)
初回全額投入(赤)のパフォーマンスがダントツですが、
マイナス幅も大きいため、資産運用に使うには
リスクが大きすぎるといえます。
このグラフの場合だと、バリュー平均法(青)がドルコスト平均法(緑)の
パフォーマンスを上回っていきます。
面白いのはバリュー平均で資産を売る際、
売却時にかかる税を引いたとしても
ドルコスト平均法を若干上回っていることです。
だとすると、課税口座をつかったとしても
バリュー平均を使ったほうがいいということ?
なかなかスゴイ威力です!
「いやいや、そんなきれいな右肩上がりだから上手く行ってるんじゃないか?」
という声も聞こえてきそうです。
でも、「右肩上がり1」のシミュレーションでは
ドルコスト平均法の方が良かったわけです。
もしかしたら大きく下がって一気に上がるような局面では
一時的にドルコスト平均法が上回るのかもしれません。
では、上がり下がりが全くない
横ばいの場合を見てみます。
3. 横ばい
バリュー経路を8千万までとすると
途中で銀行残高がマイナスになってしまうので、
6千万までとしました。
ドルコストの購入額は前回と変わりありません。
![2014-07-06 13.27.38](https://h-fpo.com/wp-content/uploads/2014/07/2014-07-06-13.27.38.png)
![2014-07-06 13.27.57](https://h-fpo.com/wp-content/uploads/2014/07/2014-07-06-13.27.57.png)
なんと横ばいであっても、
バリュー平均法のパフォーマンスは卓越していて
初回投入比+30%となっています。
課税口座を想定した税金を引いても、
ドルコストを上回っています。
うーん、すごいな。バリュー平均法。
バリュー平均法の死角
シミュレーションしていて思ったのは
確かにバリュー平均法は威力がありそうだ、
ということ。
前述のとおり、課税口座を使っても
バイ&ホールドのドルコスト平均法を
上回るパフォーマンスだったのはかなりの驚きでした。
いままでドルコストがいいと思っていましたが、
ここまでいい結果が得られるなら
本気で検討しないといけません。
一方で、バリュー平均法には難しい面もあります。
一番厄介なのは
「バリュー経路をどうとるか?」
という点。
上のシミュレーションでも、バリュー経路を上げ過ぎると
途中で投資資金が枯渇する場合があることを確認しました。
投資資金がどうなっていくかは
投資対象資産の値動きに依存するため、
あらかじめ最適なバリュー経路を決めることができないわけです。
これについての現実的な解は
- 投資資金に応じたバリュー経路
を決めて、
- 投資資金が枯渇したら積みましはなし
あるいは
- 投資資金の上限を決めておく
というぐらいしか、方法は無いかなぁ?
投資資金に上限を決める点については
岡本氏の著書でも指摘されていましたので
恐らく運用の現場でもそうした対応がなされていると
推測されます。
それからもちろん、
今回のシミュレーションでは対象資産の値動きは
架空のものであり、かつたったの3パターンしかありません。
これをもってバリュー平均法の良し悪しを
結論づけるのはいささか強引といわれても
仕方ないことと思います。
例えば今回の「右肩上がり1」のように
ドルコスト平均法が有利となるような
シミュレーションをそれこそ無数に
作ることは可能でしょう。
ただ、今までフワフワとした感覚としてしか
バリュー平均法を捉えられていなかったんですが
きわめて特定の一面とはいえ数値を元に把握し、
その価値の片鱗を理解できたのは収穫でした。
バリュー平均法、奥が深そうです。
もっと深く研究する価値がありそうな、
そんな「匂い」がします。
次は原著に当たってみるかな…