「金」投資の方法、注意点、出口戦略などまとめ

決して金投資を勧める意味ではないですが、
僕が数々のライフプラン相談を受けている中で、
金投資を実践されている方も多いように見受けます。
(なんとなくですが、年配の方に多いように思います)

ご相談の中で、資産にある「金」をどうすればいいのか
というご相談も複数受けるようになってきました。

そこで、金投資に関連する制度、必要知識について
まとめておきます。

金投資に必要な知識

既に知っていることも多いかもしれませんが
金投資にまつわる知識、必要な知識を
簡単に振り返っておきます。

有事の金

金(きん)は、はるか昔から「金=通貨」として利用されてきた
代表的な貴金属の一つです。

非常にざっくりとした解説で恐縮ですが、

人類の歴史を振り返ると、金等の現物を裏付け資産とした
通貨(金本位制等)制度の時期と
そうでない時期(信用通貨)を繰り返しているようです。

信用通貨は主に政府が発行する硬貨や紙幣ですが、
これの価値が維持されているのはひとえに政府の信用力であり、
それが覆されると高インフレ、超インフレ等を経て
紙切れになってしまいます。

そうなると金本位制に復帰したり、
あるいは外貨をそのまま国内通貨として利用したりと
いった状況になるようですね。

そうした歴史があるものですから、
超長期的にみたときの資産保全の一手段として
金の保有が根強い人気を誇っています。

これは日本だけの話ではなく、
世界中で金はその価値を認められています。

特にインド、中国の金保有量は凄まじく、
年間生産量の55%以上がインドと中国に
流れているというデータもあるようですね。

ただし注意点もあります。

金はそれ単体では価値を生まない

金は非常に安定した金属であり、
良好な保存状態であれば、
数千年だろうが、数万年だろうが、
特に変化することなく輝き続けます。

それゆえ、古くから価値保存の手段として
好んで利用されてきたわけですが
だからといって、金そのものが
勝手に増殖することもありません。

増えもせず、減りもせず、
ただひたすらそこにある
というのが金の特徴です。

要は、保存の手段にはなるけど、
増やす手段にはならない、ということですね。

例えば会社は価値を生み出すことが前提の存在であり、
株式はその会社の所有権そのものです。

ですから価格の変動はあるにせよ、
株式自体の価値が増えていくことは
十分期待できることです。

一方、金にはそんな期待はできません。

あるとすれば、市場価格が上昇していく期待のみです。

金は商品ですから、需要が高まれば価格が上がり、
供給過剰となれば価格が下がります。

確かに、供給量は横ばいか今後減少していくことが予想されていますし、
インドと中国の旺盛な需要もそれほど大きくは変化しないかもしれません。

しかし、それは今後も同様に想定されるかどうかは
誰にも分からないことです。

金の生産技術が向上するかもしれませんし、
頼みのインドと中国の消費量が低下することも
ないとはいい切れません。

ですから金の取引というのは
上昇の期待のみを買う、
厳密に言えば投資ではなく
「投機」に分類されるものであるという
理解は必須でしょう。

こうした理由から、仮に金投資をするにしても
あくまでも「傍流」として、
資産全体の数%程度を目安に
実施していくのが妥当です。

金投資の方法

金投資には大まかに純金積立と金ETFの
二つの方法があります。

金投資の種類と特徴
 純金積立金ETF
商品内容と特徴毎月一定額で金を購入していく方法。投信積立と似ている。金価格に連動したETF(上場投信)。ETFなので普通に市場で売買できる。
取扱会社貴金属商、証券会社など証券会社
主なコスト・購入手数料(購入額の数%)
・(消費税)
・口座管理料(数百~数千円/年)
・売買手数料(株式売買と同じ)
・信託報酬(0.4%前後)
課税関係譲渡所得(総合課税)譲渡所得(分離課税選択可)

上記に加え売買価格差(スプレッド)も
投資家が支払うコストになります。

取引先によって店頭価格が異なりますので、
このあたりも事前によく確認する必要があるでしょう。

純金積立とは、あらかじめ決められた額の分だけ
金を毎月買い付けるという方法で
投資家の代わりに貴金属商など販売会社が金を
保管・管理してくれる便利な方法です。

目の前に金地金がないので実感がないですが
実際に金を所有しているのは投資家自身(※)ですから
一定の数量になったら現物(地金等)での受取も当然可能です。

※ 「消費寄託」という契約方法があり、この場合所有権は販売会社にあります。その分、運用益をもらうことも可能ですが、販売会社の信用(破産等)リスクを負うことがありますので注意してください。所有権を渡したくない場合は「特定保管」を選択します。特定保管であれば信用リスクはありません。守りの資産として金を所有する場合は、特定保管を選ぶのが一般に無難といえます。

純金積立の消費税は売却時に戻ってきますから
コストとしては差し引きゼロに思われますが、
売買時には

  • 消費税が将来10%になれば、売却時に購入時の消費税との差だけ多く返ってくる
  • 時価に対する税率になるので、値上がりすればたくさん、値下がりすれば少なく払う(もらう)ことになる

という違いがあります。

時価に1.08を掛けた価格-手数料で取引されている、
という考え方をすれば分かりやすいかもしれません。

店頭価格はこの消費税を含む場合(税込み表示)と
含まない場合がありますので
その点もしっかり確認しましょう。

その他にも金地金の直接購入、
金貨や記念メダル、純金仏具などの購入もありますが
金地金は高額になったり、用途も相続対策やコレクション等
特殊になりますのでここでは省略します。

全体の資産額が大きければ、500gの金地金ぐらいから
購入しても良いかもしれません。

純金積立投資

純金積立ができる代表的なところを記しておきます。

ネット系銀行、証券の手数料が低い印象ですが、
消費寄託などの信用リスクを受けることがありますから
その点は注意しましょう。

またネット系は対面での相談とかはできません。
このあたりは株式取引と似ていますね。

金ETF投資

金ETFの代表的な銘柄を記しておきます。
※ 公式ページが英語等の場合はBloomberg等のページを記しています。
※ 正式名称内の「上場投資信託」は「ETF」と表記しています。

選ぶための主なポイントとしては

  • 金現物の裏付けがあるかどうか。あれば、信用リスクは低くなります。
  • 保有コスト(信託報酬)が十分低いか
  • 売買の流動性は十分高いか

です。

コストに関しては純金積立との比較も必要ですね。

金地金の場合、純度や品質も気になりますが、
刻印によりその品質が保証されているようです。

よほど怪しいところからの購入でなければ
大丈夫だと思います。

金の売り方と税金

金を利用したりコレクションしたりが目的ではなく、
投資と考えるのであれば出口戦略も重要です。

金投資の出口戦略を考えてみましょう。

保有時の税金

金の現物を保有しても、固定資産税はかかりません。

保有時のコストは上の表の通り、
管理手数料や信託報酬になります。

保有額によって有利、不利が変わるので
ご自身の投資額にあった方法を選びましょう。

(余談)金はこっそり所有や相続できるか?

その昔、金を所有して家の床下に埋蔵しておき、
それをこっそり相続するという方法があったといいます。

そんな方法について詳しくは僕も知らないのですが
平成24年以降は200万円以上の金の売却時に支払調書を
税務署に提出しないといけない決まりになっています。

また平成28年からは売買時の本人確認の方法も
強化されています。200万円以下だとしても、
匿名で売買するのは原則不可能でしょう。

ですからコッソリ所有、売却は基本的にできません。

仮に、購入履歴も知られず、また贈与や相続も
黙ってコッソリしたとすれば、税務署は
それを知る術はないでしょう。

ただし金を売却すると支払調書が
税務署に送られることがあるため
金を所有していないはずの人が売却すると
明らかに矛盾を生じた調書になってしまいます。

ですから、仮にコッソリ所有ができたとしても
それを換金できませんから、ちゃんと
堂々と所有するほうがよさそうです。

その前に脱税は違法ですからね(汗)
知らなかったでは済まされませんから
くれぐれもお気をつけください。

特に相続の場合はトラブルになりやすいですから、
相続する方もされる方も、しっかり準備していきましょう。

金の損益、基本は「譲渡所得」

金地金を売った時の課税関係は
こちらの国税庁のページが詳しいです。

金地金を売ったときの税金|国税庁

まず、譲渡益を計算します。

譲渡益=売却価額ー(取得価額+売却費用)

所有期間が5年以内の場合(短期譲渡)

課税譲渡所得=その年の譲渡益全体ー50万円

所有期間が5年を超える場合(長期譲渡)

課税譲渡所得=(その年の譲渡益全体ー50万円)/2

この課税譲渡所得が、給与所得等と合算されて
(さらに必要な控除もされて)所得税、住民税の計算へ、
となります。

累進課税ですので、税率がどうなるかは
給与所得等の額によることになります。

一般には、金の価格が上がっているからと言って、
給与が多い期間に売却してしまうと
思わぬ課税がなされてしまう可能性があり
注意が必要ですね。

50万円の特別控除が使えるので
控除の範囲で少しずつ売却すれば問題ないでしょう。

また頻繁に売買するなどして営利目的と判断されれば
「雑所得」となって総合課税されます。

雑所得になると特別控除の50万円も、
長期譲渡の1/2もありませんから、
税金面で不利になります。

さらに事業として取引を行う場合、
事業所得になります。

このあたりは税務署の判断にも依存するようですので、
心配ならお近くの税務署等へお問合わせを。

金ETFは証券と同じ分離課税を選択可能

金ETFは証券投資(株など)と同じですので、
分離課税を選択できます。

分離課税とはその他の所得と「分離」して
金の譲渡益に対して20.315%を徴収し、
それで課税関係が終わりとなる方法のことです。

この仕組みは株式や投資信託の売買と同じで、
金ETFにも同様に適用されています。

もう一つ金ETFの特徴があって、
NISAが使えることです。

2018年からの積立NISAでは
恐らく使えないのですが、
現行のNISAであれば普通に金ETFも
買い付けることが出来ます。

NISA口座であれば利益が出ても非課税ですから
その分お得になりますね。

ただしNISAの非課税期間は5年間、
現行NISAの投資は2023年末で終了となりますから
あくまでも一時的な節税です。

金ETFから現物へ転換した場合

金ETFが一定の数量に達したら、金地金の現物に
転換(小口転換)できるものもあるようです。
→ 純金ETF(金の果実)

金の果実の場合、1回の転換1kg単位、5kgまで
の金地金への転換が可能になっています。

詳しく試算したわけではないですが、
転換時に消費税と転換取扱手数料が必要になりますから、
最終的に金地金を持つつもりなのであれば
最初から純金積立でやったほうがいいような気もします。

また、転換すると売却時の税制も変わります。
→ 転換(交換)について|三菱UFJ信託銀行

金ETFは分離課税を選択できますが、
金地金の場合は基本、総合課税です。

ただし毎年50万円の特別控除が使えますし、
長期譲渡(5年以上所有)であれば、
さらに1/2されて課税所得となりますから
金地金のほうが税制面で有利といえます。

長期譲渡を狙うなら、
転換時からの保有期間となりますので
その点も覚えておきましょう。

例えばNISAが使える間はNISAで金ETFを購入し、
その後数量が揃えば金地金に転換して
将来の節税に備える、という戦略も
無くはないと思います。
(面倒ですが)

もしNISAで毎年積み立てたい場合、
来年2018年から始まる積立NISAとは選択になりますから
注意してください。
(既に書いたとおり、積立NISAで金ETFは投資できないと思われます)

元々特別控除枠内での売買を想定するなら、
NISAの活用までは不要かと思います。

金投資のまとめ

金は永遠の輝きを放つ、
人類にとって特別な貴金属です。

歴史上、無価値になったことがないなどの特長がありますので
保有財産として一定の価値はあるといえるでしょう。

ただ、増殖したり利息が付いたりするものではありませんから
投資としてはあくまでも「おまけ」と考えるべきです。
ですので、全金融資産の数%程度がいいと思います。

投資のコアは長期分散投資
というポリシーが貫かれているのであれば
特に問題ないでしょう。

投資をするなら税制面など出口戦略も練りながら、
上手に行ってください。

金の積立投資を始めるなら
こちらでいいと思います。

上記は筆者の意見を含みますが金投資を推奨する意味ではありません。投資はご自身の判断で、自己責任でお願いします。

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