保険の一括払いと年払い、どっちがお得!?支払い総額ではなく、利回りで考えよう。
保険には、一括払いと各年で払っていく場合とで
保険料に大きな差が出る場合があります。
単純に金額で比較することも多いようですが、
それでは本当に得なのか損なのか、実はわからないんです。
ここは投資家らしく、利回りを計算しながら
しっかりと損得を比較してみましょう。
利回りとはどういうことなの?
事例が無いと理解しにくいと思いますので、今回は
一括払いで得する保険、損する保険!?|AllAbout
の記事で取り上げられた火災保険の例を使って実際に損得を計算してみましょう。
なお、この記事の事例を使ったのは、批判などの意図ではなく、
たまたま分かりやすい例だったというだけです。
まず、この例での火災保険の基本条件は
- 保険金1300万円に対し、保険料が
- 1年払い:19,630円
- 36年払い:480,220円
です。
1年払いと36年一括払いを比較する際、
最も単純には1年払いを36年払い続けた時の総額
19630x36=706,680円と480,220円の額を比較し、
大小で決める方法です。
もちろんこの場合は36年一括払いの48万円が低く、
お得という結論になります。
ところで、少し心に引っかかりませんか?
そう、36年という、非常に長い期間です。
2万円を36年という長期で支払う価値と
48万円を最初に払ってしまう価値の
いったいどちらが自分にとって得なのか?
正確に比較するためには
実は、これを考えなければいけません。
資産運用の考えを応用する
さて、時点の異なるお金の価値を比較する考え方として
一般的に使われる方法として「現在価値」に直す
という方法があります。
上の例で言えば、36年間の2万円の支出と
48万円のそれぞれの現在価値を比較すれば、
どちらの価値が高いかが正確に比較できます。
なお、いずれも支出(マイナス)ですので、
数字の小さい方が現在価値は高くなります。
48万円の現在価値は簡単で、48万円です。
一方36年間の2万円の支出の現在価値が分かりにくいですが
「年金現価係数」という公式があるので、
それを使えば簡単に求めることができます。
ここで複利運用の年利回りをとすると、
36年間の2万円の支出の現在価値は
となります。
これは借り入れで考えれば
金利の債務を毎年2万円ずつ36年かけて返済していくときの最初の債務残高
ということになり、資産運用で考えれば
利回りで複利運用し、毎年2万円ずつ36年間引き出す場合に必要な初期資金
ともいえます。
いずれも、受け取る人が違うだけで同じことをいっていますので
理解しやすい方で考えればいいと思います。
さて、この金額が48万円と一致するときの利回りを計算すれば、
保険会社の想定利回りを計算することができます。
グラフで見てみましょう。
青が各利回りでの上で示した初期債務(初期資金)、
赤が一括払い金額です。
Excelのソルバー機能を使えば解を求めることができ、
年利2.26%で両者が一致するのがわかります。
両者とも保険料という支払い額ですから、
現在価値としては小さい方が高くなります。
ということは、
自分で運用する場合の利回りが2.26%以下なら一括払いがお得
それ以上の利回りを達成できるなら年払いがお得
という結論だということがわかりました。
なんだか腑に落ちない。。。という方は、
「機会費用」を思い出してもらえたら
理解が進むかもしれません。
「機会費用(機会損失)」とは、もし投資したら得られたであろう利益のことで、
上の例で言えば48万円一括払いをしてしまうと
その分の投資ができないため、その分の「機会損失」が発生している
と解釈できます。
利回りが2.26%以上の場合は、年払いよりも機会損失が上回って損となる
というわけですね。
支払い総額だけで比較してしまうと、逆に損をする可能性もあることが
わかっていただけたかと思います。
こうした利回りはありとあらゆるところに存在しています。
さて、上の例は火災保険の支払いでしたが、
こうした例は世の中に数え切れないほどあります。
様々な保険で一括払いのオプションがありますし、
習い事の月謝や車のローンの支払いは言うに及ばず。
カードの一括払いの引き落としが数か月先、
というのも一緒です。
もう少し複雑な例では、老齢年金の前倒し受け取り、
なんかも同じ類の話です。
単純に金額を比較するだけでは、気をつけないと
実際には損になってしまう可能性もあるわけです。
大した影響はないだろう?
とタカをくくってしまう人も多いかもしれませんが、
この原則を知っているかどうかで
長い目で見るとかなり大きな違いを産んでいきます。
現在の三菱グループの礎を作った明治の豪商、
岩崎弥太郎も金の動かし方に通じていて、
商船には「前払い(の入金)」という慣習があったため、
手元資金が潤沢となって
その後の金貸し業につながったと言われています。
この場合はわずかな時間差ではあったと思いますが、
金額が莫大だったので大きな効果があったというわけです。
事前にもらう(後で払う)ことの威力を
うかがい知ることができる事例ですね。
お金の支払いや受け取る時間が異なる場合は
その利回りに注意せよ。
是非覚えておきたいことです。