収入アップvs節約。どっちがキャッシュ・フローに効くか、理論面から対決してみた。


キャッシュ・フロー=収入ー支出。

この一見して単純な方程式の裏側には、
資産構築に役立つ様々なノウハウが詰まっています。

当然ながら、キャッシュ・フローをプラスに維持し、
それを拡大していくのが資産構築の近道ですが、
まず収入を増やせばいいのでしょうか。
それとも、支出を減らせばいいのでしょうか。

あなたはどちらだと思いますか?

キャッシュ・フローのリスク

収入を1万円増やすのも、支出を1万円減らすのも、
キャッシュ・フローの額で見ればどちらもプラス1万円で
変わりがありません。

これだけを見ると、どちらでもいいという結論になりそうですね。

そこで、少し視点を変えて
キャッシュ・フローのリスクを考えてみましょう。

キャッシュ・フローの増え量が同じであれば、
よりリスクを下げる方が良い増え方だ、
といえるからです。

以下、少しだけ数式が出ますが、数式を追えない方は
文章だけ追ってもらっても構いません。

まず、キャッシュ・フロー C
C_i :収入(キャッシュ・イン)
C_o :支出(キャッシュ・アウト)

のとき、

C = C_i - C_o

で表されます。

ここでキャッシュ・フローのリスクを考えます。
金融におけるリスク(変動)は
分散(標準偏差)Vで表せますから

V(C) = V(C_i-C_o)

差の分散の公式より

V(C) = V(C_i) + V(C_o) - 2C_{ov}(C_i,C_o)

C_{ov}は2変数の共分散です。
収入と支出が独立だとすると
(この場合の独立とは確率的な意味での独立で
両者が無関係な、というイメージです)
上記の共分散項はゼロになって

V(C) = V(C_i) + V(C_o)

と表されます。

収入と支出が独立(無関係)というのは考えにくいですが、話がややこしくなってしまうのでここでは独立としました。いや、投資が上手い人な収入が増えても、やみくもに支出を増やさないことだって容易にできるかもしれません。

ここまでで、途中過程を理解できなくても、

キャッシュ・フローのリスクは
収入のリスクと
支出のリスクの足し算になっている

ということが理解できれば問題ありません。

(標準偏差を考える場合は、両辺共ルートを取ります)

これで議論の準備が整いました。

収入を増やす場合

収入を増やす、すなわちC_iを増やす場合、
C_iのリスクV(C_i)はどうなるでしょうか。

ここでもう一つ、上記と同様の式を導入しておきます。

V(X+Y) = V(X)+V(Y)+C_{ov}(X,Y)

V(nX) = n^2 V(X)

Xが今の収入で、Yが増えた分の収入だとします。
すると、XYが独立(無相関)だとしても、
リスクが増えてしまいます。

XYが逆相関であれば、リスクを減らすことも可能ですが
それは例えば今いる会社のライバル会社からも収入を得る感じでしょうか。

どうでしょう。
あまり想像がつきませんね。

次に、単純に今の収入Xn倍になる場合を考えると
収入が増えるということはn > 1でしょうから、
n^2も1より大きくなります。

よって、こちらもキャッシュ・フローの
リスクを増やす方向に働きます。

結論として、
収入を増やすとリスクも増えやすい
ということがいえそうです。

支出を減らす場合

一方支出を減らす場合の
キャッシュ・フローのリスクについて同様に考えてみましょう。

大抵、支出はいくつかの小さな支出の総和です。

C_o = C_{o1}+C_{o2}+C_{o3}+...+C_{om}

それぞれの支出が独立とすると、リスクは

V(C_o) = V(C_{o1})+V(C_{o2})+V(C_{o3})+...+V(C_{om})

となり、
各支出のリスクを減らせば
総支出のリスクも減らせます。

僕の想像力が足りないだけかもしれませんが、
支出の減らし方にそれほどバリエーションがあるとは思えません。

ほとんどは、同じ効果のあるより安価なモノやサービスに置き換えるか
支出そのものを止めるかのいずれかでしょう。

いずれにしても

V(nC_{oi})=n^2 V(C_{oi})

ですから、支出を減らす、すなわち
n<1ならn^2<1であり、
分散(=リスク)を減らせます。

この場合支出そのものを止めるということは、
n=0に相当します。

収入を増やす場合とは反対に、
支出を減らせば、リスクも確実に減ります。

誤解のないように補足

ここまでの議論で、収入を増やすよりも支出を減らすほうが
キャッシュ・フローのリスクを減らせることが分かりました。

キャッシュ・フローそのものが、キャッシュ・フローのリスクより
十分大きければ、キャッシュ・フローがプラスになる確率が
大きくなります。

すなわちキャッシュ・フロー平均をE(C)とすると

E(C) / \sqrt{V(C)}

が大きければ大きいほど、
プラスのキャッシュ・フローを確保できるようになります。

この数字が3を超えていたら、恐らく
キャッシュ・フローがマイナスになることは
ほとんど無いはずです。

当然、分母のリスクを小さくすることが
インパクトが大きいといえます。
即ち、支出を減らすのがいい、ということですね。

もう一つ大切なポイントとして
キャッシュ・フローがプラスになることと
キャッシュ・フローそのものの大きさには
あまり関係がない、ということです。

例えば

  • Aさんのキャッシュ・フロー:+100万、−50万、+200万、…
  • Bさんのキャッシュ・フロー:+7万、+5万、+6万、…

の二人がいたとして、安定しているのはBさんですし、長い目で見ると
Bさんの方が安定して資産を構築できる可能性もあります。

誤解のないように補足しておきますと、
収入を増やすなと言っているわけではありません。

あくまで、収入を増やすか支出を減らすか問われたら
一般に支出を減らしたほうが有利だよ、
と言ったまでです。

例えば支出はいくら減らそうが
マイナスにはできないという弱点があります。

また、収入を支える支出というのもありますから
闇雲に減らせばいいというものでもないでしょう。
(闇雲に減らす人のことを俗にケチといいます)

逆に、収入は青天井ですので
一定レベルまで支出を減らせたら、
あとは安心して収入を増やすことに専念すべき
です。

(ここで、収入が増えたからといって、
支出を増やさないように気をつけて!)

あとがき

この記事を書いている時点で、
消費税増税は先送りされることがほぼ確実視されています。

日本政府の財政再建がさらに遠のいた印象ですが、
プライマリーバランス(収支バランス)を黒字化する、
つまりキャッシュ・フローをプラスにすることが
2020年までの目標として掲げられています。

上と全く同じ議論をするならば、
このプライマリーバランスの達成方法として
税収入を高めること、すなわち景気対策や消費税アップばかりに
議論が集中するのはいささか大きな違和感を覚えてしまいます。

国だろうが家計だろうが、理論は同じであり、
支出を抑制する方が財政は安定します。

景気対策云々というのは理解できるとしても
議員定数削減などの「身を切る改革」とやらは
一体どこへ行ってしまったのでしょうか。

日本国債の格付けも下げられたことですし、
日本売りや日本そのもののリスクも、
少しずつ意識されてきています。

景気を良くし、税収を高めることも大切ですが
歳出削減(というか歳出の合理化)にも
きちんと取り組んで欲しいなと思うこのごろでした。

まぁ、お国はどうなるか分かりませんが、
それにお付き合いする必要もありませんので
個人としてはしっかりと準備しておけば良いかと思います。

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