増税?減税?平成30年度税制改正大綱…ぶっちゃけどうなるんですか?
昨年末に公表された
平成30年度税制改正大綱。
個人の所得税に関する改正が多く
個人として注目度の高い改正案と言えます。
気になる所について見ていきましょう。
目次(タップでジャンプ)
税制改正にある「給与所得控除」って、何?
所得控除というのは収入から差っ引く金額で
引いたあとの金額に対して累進課税されるのが
所得税の基本になります。
控除金額が多ければ相対的に課税される所得が少なくなり
減税となるわけですね。
このうち「給与所得控除」は会社員等
給与所得者に適用される特別な所得控除で
年収に応じて自動的に控除額が決まるという
特徴があります。
既にご理解頂いているかもしれませんが
この所得控除が少なくなるということは
相対的に増税になる、ということなんです。
平成30年の税制改正大綱では
- 給与所得控除、公的年金等控除額が10万円分、少なくなります。
- 青色申告特別控除が基本10万円分、少なくなります。ただし確定申告に電子申告等を用いれば、65万円に据え置かれます。
- 基礎控除が10万円分、アップします。
- その他いろいろあります(笑)
なんだか控除が少なくなるんだか、多くなるんだか
わけわからないですよね。
少し詳しく、見ていきましょう。
結局、2020年からの所得控除額はどうなる?
今回の税制改正大綱では
給与所得、公的年金、個人事業主の所得に
影響があります。
とはいえ3つとも網羅するのは大変ですし
一番関心があるのは給与所得者(すなわちサラリーパーソン)
だと思うので、そこにフォーカスします。
給与所得控除(会社員の税金)
会社員には給与所得控除というものがあり
年収の額に応じて所得控除が得られます。
細かい説明は省きますが
今回給与所得控除が減るのと同時に
基礎控除と呼ばれる誰でも持っている
控除額が増えます。
ですので、両方合わせて考えないと
制度変更の主旨が見えてきません。
実際には給与所得控除と基礎控除に加えて
単身世帯であっても社会保険料の控除等が
あります。
ただ、相違点を明確にするためにここでは
単純化しますね。
給与所得控除と基礎控除を合わせると
所得控除の額は以下のように変化するようです。
給与所得控除+基礎控除の現行と2020年以降の比較
年収850万円までは変化がありません。
一方年収850万円を超えて2,400万円までは
15万円の差があります。
さらに2,400万円から2,500万円までの間に
段階的に基礎控除が削減され、最終的に
基礎控除がゼロとなります。
したがって先程の15万円と基礎控除48万円分の
あわせて63万円が最終的な所得控除の差となります。
じゃぁ実際の税額はどれぐらい変わってくるのでしょうか。
上記のデータを前提に、所得税と住民税を試算し
その差を計算してみます。
前提条件として
- 社会保険料は概算とし、両者同じ
- 給与所得控除と基礎控除以外の人的控除はない(単身世帯)
- 住民税は所得税の課税所得を元に10%で計算
- 翌年の住民税と所得税を合算
とします。
所得税+住民税の比較
所得控除が減るに従い税額も増えていく事が分かりますね。
年収2,500万円以上の高所得者は
約32万円の増税となりますから
まぁまぁ大きいと言えます。
一方で多くの方が当てはまるだろう
年収850万円以下の世帯では
特に変化がありません。
高所得者狙い撃ちと言われる所以ですね。
ただし子どもがいる世帯には優しい(所得金額調整控除)
このように高所得者に厳しい改正ですが
子ども(23歳未満の扶養親族)がいる世帯では
「所得金額調整控除」と呼ばれる控除が
新しく導入されます。
所得金額調整控除額=(給与収入(年収)ー850万円)x10%
で、年収1,000万円が上限です。
この控除の上限は15万円ですね。
ということで、23歳未満の子どもがいる場合は
年収2,400万円以下なら現行制度と実質変わらない
ということになりそうです。
子どもがいるところは大目にみよか
ということですかね。
なお、これは本人が特別障害者である場合も適用できます。
上記シミュレーションはあくまでも「概算」であり
個別の税の詳細については税務署または税理士などの
税の専門家にお問合わせください。
個人事業主の特別控除(個人事業主の税金)
給与所得者のあれこれが変わるのに合わせて
個人事業主の所得控除も変わります。
基礎控除が10万円アップする代わりに
青色申告特別控除が10万円減額。
まぁ、プラマイゼロなわけですが
e-Taxを利用して確定申告すれば
元の65万円が適用されるそうです。
e-Tax使う人はその分ボーナス出すよ
ということでしょうか。
でもe-Taxって昔やったことがあるんですが
かなり使いにくい印象なんですよね…(苦笑)
さて以上は所得税と住民税を中心にお話してきましたが
住民税に関しては厳密には少々異なることと
社会保険料(国保等)については無視しています。
基礎控除が増えることにより社会保険料の算定基準が下がり
結果として保険料の減少となる可能性もありますので
詳しくはお近くの役所や税務署等にお問合わせを。
ただし社会保険の財政悪化を招く恐れもあり
引き続き注意は必要です。
(参考:税制改正がもたらす国保財政の悪化-税制と社会保険料の整合的な議論を(ニッセイ基礎研))
ちなみに現段階ではあくまでも「大綱」レベルなので
閣議決定されるプロセスで内容変更となる可能性は
もちろんあります。
ただ、大まかな方向性や傾向については
あまり変わらないのではないでしょうか。
「プチ」副業する人が税金上有利になっていく可能性がある
まぁ政府の本音としては
社会保障費も膨れ上がっているし
給与所得者は源泉徴収だから取りやすい
というのはあるかもしれません。
やり過ぎだという意見もあるかもしれませんが
給与所得控除の優遇は戦後拡大されてきた歴史があり
それが近年修正されてきているという見方もあります。
諸外国と比べて厳しいという事はないので
今後さらに増税方向に動く可能性は
十分にあるでしょう。
納税は義務なので従うしかないのですが
知識を身につけて自衛したり
自らより有利な方向に変化していくのが
前向きな対応と言えます。
特に、会社員で副業(個人事業)する人は
- 給与所得控除
- 個人事業主の特別控除(白色または青色)
がダブルで使え、税制上有利です。
特に今回の改正では青色申告&e-Taxを使えば
65万円の特別控除が活用できますからね。
これは明確なメリットと言えます。
月5万円(年60万円)程度までの利益なら
実質非課税といえるでしょう。
またそれぐらいの副業であれば
本業で忙しい人も無理なくできる範囲です。
今まで原則副業禁止だったのでこういう仕組み自体
知っている人が少なかったかもしれません。
日本は源泉徴収システムがしっかりしていて
特に会社員は税の意識が低いと言われています。
実際、僕も会社員時代だったときは
確かに税金なんて面倒で考えてなかったです(苦笑)
でも昨今の(給与所得者に対する)増税傾向や
副業解禁の動きを見るに
これからは節税意識を高めながら
極力「手取り」金額を増やさない限り
なかなかお金が貯まりにくくなってくることも
予想されます。
ライフプランを改善する場合、
固定費削減や節約は一番効くんですが
収入アップも二番目に大事な項目になります。
(ちなみに資産運用は三番目です)
老後破綻、教育費破綻を回避するためにも
今後は会社だけに頼らず
自力で収入を増やしていく方法を
学んでいく必要がありますね。