知っておこう!「どうしてマイナス金利で債権価格が急騰するんですか?」
こんにちは。林FP事務所の林です。
日銀がマイナス金利政策を発表してから、
2週間ほどが経ちました。
様々な解説記事やアナリスト予測が
取り上げられていますが、
今日は基本に立ち返って
「なんでマイナス金利になったら、
債券価格が急騰するんですか?」
という疑問にお答えしてみようと思います。
マイナス金利で債権価格が上昇する仕組み
固定金利の債権(確定利付債)は、
発行時に金利の支払いが決まっているため、
現在の利回りを反映させるためには
「現在の価格」で調整するしかありません。
※現在の価格をその時の価格という意味で「時価」と言います。
時価とは、現在市場で取引されている価格のことで、
これが債権のリスクと現在の利回りからみた
取引時点での合理的な価格とみなされています。
ではこの「合理的な価格」とは
どういう価格でしょうか?
その前に、まず債権の基本から
理解する必要があります。
1年で1%の利息が付く、1年で償還する債権があるとします。
発行時価格が100円、償還時も100円で
それに利息分1円が付きますから
償還時はあわせて101円となります。
では次に、発行直後に同様の債権の利息が
0%になってしまったとしましょう。
どういうことが起きるかというと、
既に発行されている債権(これを既発債といいます)は
利回りが1%もありますから、
「なんとか譲ってくれ!」
という人が増え、既発債に買いが殺到します。
そうなると、既発債の時価が一気に上昇し、
結局利回りが0%になるまで上昇します。
利回りが0%になるということは、
償還時価格と同じ、つまり、
101円まで上昇するということです。
ここまで理解できれば、
あとはもう少し。
では、利息がマイナス2%となってしまったら、
どうなるでしょうか。
上と同じ理由で既発債の価格は上昇し、
既発債の利回りはマイナス2%となります。
ただしちょっとややこしいのは、
時価はマイナス2%にした後に101円となる元の価格
つまり 103.1円 という中途半端な価格になります。
103.1円 x (100-2) ÷ 100 = 101円
ですね。
以上の話は、1年後に償還するという前提でしたが、
実際の償還時期はばらばらです。
償還までの期間が1年以上ある場合は、
どうなるでしょうか。
最も単純には、償還まで◯◯年あれば、
1年後の場合の◯◯倍となります。
償還まで10年なら、10倍ですね。
上の図で説明すれば、オレンジの三角形の形は変えずに
サイズだけ変わると思えば理解しやすいと思います。
日銀からマイナス金利が発表された直後に
国内債権インデックスが急騰したのは、
このような理由からです。
実際にはもう少し複雑な理屈や理由で価格が決まるはずですが、
個人投資家がそこまで理解する必要はないと思います。
上のイメージがつかめていれば
とりあえず十分でしょう。
マイナス金利で買い手がつくのはおかしいのでは?
金利がマイナスになれば理屈上、
債券価格が上昇することは分かりました。
そして一時的にであれ長期国債の金利がマイナスとなったように、
実際にマイナス金利圏内で売買が成立しています。
でも落ち着いて考えてみると
「買えば損をする商品を、あえて買う人って…誰?」
という、素朴な疑問が残ります。
マイナス金利なわけですから、
満期まで持つと必ず損をします。
大金持ちの道楽じゃないんですから、
普通、損をすることが「確定している」
商品なんて、誰も買いませんよね。
そこは実はからくりがあって、
マイナス金利で買った国債を満期まで持たずに
誰かに売る(※)わけですね。
※ このときの利回りを「所有期間利回り」と言います。
売るときに債券価格が上昇(金利は下落)していれば、
利益が出るのでそれをあてに敢えてマイナス金利の
国債を買う。
ということは、日銀のマイナス金利政策が
さらに進むと読んだ人(機関)がいた、
というわけですね。
これで、実際に長期国債がマイナス金利で
取引された理由が理解できました。
マイナス金利は続くの?続かないの?
「マイナス金利は異常事態」
「マイナス金利は鏡の世界」
といわれていて、現状では
一過性のものと認識されています。
マイナス金利が一過性なのか今後常態化するのか
僕は予測することはしませんが、
常態化するとすれば、
それは一体どんな世界なのでしょうか。
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