「為替ヘッジ付き外債」のネックはヘッジコスト。ならば自分でヘッジできないか?
こんにちは。林FP事務所の林です。
数年前から流行っている「為替ヘッジ付き外国債券ファンド」。
アベノミクスによる円安相場で一旦は下火になりましたが、
円安が一服し、再び面白い状況となっています。
ただ、為替ヘッジのコストがネックで、
パフォーマンスも外債インデックスを大幅に
下回っています。
ヘッジ無しファンドを自分でヘッジすることで、
コストを緩和できないのでしょうか?
シミュレーションしました。
為替ヘッジ付き外債とは
為替ヘッジ付き外債とは、
外国債券を外貨(例えばドル)で購入し、
その外貨の両替レートを先物でヘッジします。
これを一つのパッケージにしたものが、
為替ヘッジ付き外国債券ファンドです。
理論的には、外債のヘッジに旨みはなく
長期的には国内債券とパフォーマンスが同じになるだろうというのが
理論界隈の定説です。
が、政策によりFFレートをゼロ付近に持って行っている現在、
米国と日本の短期金利差は縮小(=ヘッジコストが低下)しており、
ヘッジ付き外債のパフォーマンスが国内債券よりよい、というのが現状です。
為替リスクがなくて、国内債券以上のパフォーマンスなら
確かに注目されてもおかしくはありません。
ヘッジコストがバカにならない…?
ただ、いくら利益になるとはいえ、ヘッジコストが高ければ
そのメリットも薄れてしまいます。
そこでファンドによるヘッジコストと
自前(FX)によるヘッジコストを比較してみることにしました。
まず、為替ヘッジ付き外債の代表として
年金積立 インデックスファンド海外債券(ヘッジあり)
について検証してみます。
「ヘッジあり」の基準価格推移はこちら。
(2014/06運用レポートより)
目標は、同ファンドの(ヘッジなし)+FXヘッジで
上の黒線のパフォーマンスを上回ることです。
なお「ヘッジなし」の基準価格推移となると
(2014/06運用レポートより)
のようになっています。
インデックスに対するファンドのパフォーマンスは、
2001/10から2014/06の期間にかけて
ヘッジあり:-11%
ヘッジなし:-10%
となっていて、ヘッジなしがわずかに上回っています。
恐らくヘッジコストを除いた分、ヘッジ無しの方が
インデックスに近付いているのだと思いますが、
ヘッジコストが意外と小さくてびっくりです。
逆に言えば信託報酬0.72%がデカイのかもしれませんが。
最初はヘッジコストが高いだろう、と
タカをくくってたんですが(汗)
これだと、もしかしたらFXでヘッジしても
あまりメリットは無いかも知れませんが、
念のため検証してみます。
検証方法
まずヘッジ「なし」ファンドの基準価格を
FXでヘッジしたときの直近1年のコストを計算します。
1年前、2013年6月28日のファンド分配なし基準価格は16,182円。
1万口購入するとして、当日の為替レートが99.1円として
163.3通貨(ドル)になります。
一般にスワップコストが低い
GMOクリック証券のスワップポイントカレンダーによれば
10,000通貨時のドルヘッジコストは
ですから、163.3通貨では
163.3 ÷ 10,000 x (-1,719) = -28 円
となります。これが、FXによるヘッジコスト。
で、実はファンドはドルだけでなく、ユーロやポンド建て債券もあるので
ドルだけでヘッジするわけにはいきません。
ただ細かくし過ぎるとワケが分からなくなるので
とりあえずユーロ55%、ドル45%で同様にヘッジしてみたのが
下の表です。
直近1年での損益騰落率は、税引き前で5.3%ですが、
税引き後は2.8%まで低下します。
こちらは「ヘッジあり」の騰落率ですが、
税引き前では「FX+ヘッジなし」に若干負けてますが
税引き後では上回っています。
これはなぜかというと、
ファンドの損益とFXの損益が通算できず、
利益の出たほうに一方的に課税されるため
です。
残念ながら税法上、これは仕方がありません。
もし合法的に損益通算する方法があれば、
もしかしたらパフォーマンスを上げられる可能性も
あったんですけどね…。
税法に詳しい人がいたら、
教えてくださいw
まとめ
為替ヘッジ付き外債のヘッジコストを下げる目的で、
FXによるヘッジコストのシミュレーションを行いました。
が、以下の結論を得ました…
- ヘッジ付きファンドのヘッジコストが意外に(失礼。)低い
- 税制上の問題で、FXによるヘッジはリスクが高い。
うまくいくかも?と思い始めたシミュレーションですが、
見事に返り討ちにあいました(笑)
ということで、為替ヘッジをしたければ
素直にヘッジ付きファンドを購入するのが合理的みたいです。
参考ブログ
「ヘッジ外債は理論的には無意味だし、見るべきものはない」
とタカをくくってましたが、以下のブログやサイトの記事に触発され、
FXヘッジとのコストを比較をしてみました。
残念ながら僕の結論に新鮮味はありませんでしたが
新たな気づきを与えてくれて感謝!
- これだけは知っておきたい為替ヘッジ付き外債
- いま、「為替ヘッジあり」の外債ファンドが儲かる!?
- ヘッジ付き外債のリターンの仕組み
合わせてお読みください。