マイナス金利が常識となる世界:「マイナス金利のローンは存在できるのでしょうか?」
前回の記事
知っておこう!「どうしてマイナス金利で債権価格が急騰するんですか?」
の続き。
前回は債権の値動きについての
基本的なおさらいでした。
今回は、もう少し踏み込んで
マイナス金利が常識化した場合の
(住宅)ローンについて考えてみました。
マイナス金利が「常識」となったら?ローンはこうなる。
よく、マイナス金利のローンを組めば、
ローンの返済額が減るので儲かる。
だから、みんなローンばかり使って
経済が混乱する!?
というようなことがまことしやかに
伝えられているように思います。
これは本当のことなのでしょうか?
論より証拠。
具体的なシミュレーションで
確認してみましょう。
まずは、ゼロ金利の状態を考えてみます。
預金金利がゼロで、ローン金利が
1.5%固定とします。
この条件で、1000万円のローンを
返済せずに20年間、放置したとします。
ゼロ金利ですので、預金残高(青線)は
20年経っても全く増えません。
一方、ローン(赤線)は1.5%で増えていきますので、
20年後の残高は1300万円を超えています。
緑はローン残高と預金残高との差額で、
時間が経つほど預金以上にローン残高が
増えていることがわかります。
さて、お次にマイナス金利では
どんな状態になるのでしょうか。
数字を微妙にしてしまうとわかりづらいので、
一気に預金金利がマイナス5%とします。
かなりのマイナス金利ですね。
ローン金利は預金金利マイナス5%に
+1.5%を乗せて、マイナス3.5%とします。
この条件で、上と同じグラフを描くとこうなります。
預金、ローンとも時間が経つごとに減っていきますが、
預金金利の減りが早くなっています。
そのため、差額でみるとやはり右肩上がりで
ローン残高の方が大きくなっていることが
わかりますね。
マイナスの世界なので、やや頭が混乱しますが、
どういうことかというと、マイナス金利であっても
やっぱりローンを組むほうが損だということです。
マイナス金利だからといって、
闇雲にローンを組んではいけません。
「いやいや、マイナス金利の世界の場合、
差額の増え方が緩やかだから、
やっぱりちょっと有利なんじゃないの!?」
という指摘もあるかもしれません。
これも誤解で、各時点の預金の価値で割り戻すと、
ゼロ金利の場合とほぼ一致します。
結局のところ、
世の中うまい話はそうそうない
ということなんでしょうね…。
以上から、マイナス金利のローンは
普通に存在できることがわかりました。
ただ、これは非常に「素朴」な理論で考えて
ありうると結論しただけで、実務上は
たくさんの「課題」があると思います。
マイナス金利を導入した張本人である日銀ですら、
現場が混乱しているという話だそうなので…。
マイナス金利の影響で、
保険会社の貯蓄型商品も
次々と姿を消しているようです。
しばらくは、いろんな影響が出そうですね。
マイナス金利関連の記事はこちら
マイナス金利でローンを組んで、預金せずに金に換えたり札束のまま金庫に入れて、借金が下がった状態で、金を現金化したり金庫内の札束で返済したら、残りは丸儲けでしょう? 「一定額以上の札束は必ず銀行に預けなければならない。」、「金やプラチナなどへの換金を禁止する」などの強引な法律を伴わない限り、個人に対するマイナス金利のローンは絶対にありえませんよ。
ひろさん
コメント頂き、ありがとうございます。
使途自由のローンだと、ご指摘の可能性はありますね。そうした丸儲けの可能性のあるローンの場合、市場原理により淘汰もしくは供給制限されるので、強引にマイナス金利に持っていくのは確かに難しいことだろうと思います。
逆にいえば条件がつけばありうるということで、LIBOR+αの優良顧客、使途制限の付いたローン(典型的には、住宅ローンなど)では、可能性としてゼロではないと思いますし、少数ながら実際の事例もあるようです。
ひろさんは勉強熱心のようですので、「マイナス金利」(徳勝礼子)のような書籍も、参考になると思いますよ。