「みんなと一緒」という異常な生き方はしないでください。
「みなさん、どれぐらいの生活費なんでしょうか?」
「みなさん、だいたい資産って、どれぐらいもっているものなんでしょうか?」
こういうことって、気になりますよね。
特に、資産額というのは他人に聞きにくいですので、
一番気になっているところだと思います。
では、具体的に見ていきましょう。
え、みんな1,000万円も持っているの!?
ここに、金融広報中央委員会が調査した
家計の金融資産のデータがあります。
平均(万円) | |
---|---|
20代 | 219 |
30代 | 379 |
40代 | 700 |
50代 | 1,067 |
60代 | 1,535 |
70歳以上 | 1,581 |
これを見ると20代でも200万円以上、
40代で700万円、50代以上となると
1,000万円以上の金融資産を「平均で」
持っていることが分かります。
このデータに、ウソ偽りはないと思います。
このデータを見た正直な感想として
「結構みんな、もってるんだなぁ」
と思いませんか?
では、同じ統計データで、今度は平均ではなくて
「中央値」で見てみましょう。
中央値とは聞きなれない言葉かもしれませんが、
平均値は全員の資産を足して人數で割りますが、
中央値は資産額の大きい順に並べて、真ん中の人の
資産額になります。
真ん中の人というのは、1,000人いたら、
500番目の人、という意味です。
では早速見てみると…
中央値(万円) | 中央値-平均(万円) | |
---|---|---|
20代 | 75 | -144 |
30代 | 200 | -179 |
40代 | 225 | -475 |
50代 | 379 | -688 |
60代 | 670 | -865 |
70歳以上 | 552 | -1,029 |
先ほどの平均値とは異なり、
かなり「少なく」なった気がしませんか?
参考のために、
「中央値ー平均値」
の数字も載せましたが、
軒並み数百万円から、70歳以上では
1,000万円以上「少なく」なります。
一体、何を信じればいいんでしょうか?
資産額の統計値をどう解釈したらいいの?
もう一度基本に立ち返ってみましょう。
あなたは最初、
「みなさん、だいたい資産って、どれぐらいもっているものなんでしょうか?」
と、問いましたよね。
さてここで問題ですが、この問の中の
「みなさん」とは、誰をさすのでしょうか?
日本国民全員でしょうか。
1億人以上いますよね。
「いやいや、大体同年代で…」
なるほど。では、その同年代の方の、
平均値でしょうか、中央値でしょうか?
ちなみに70歳以上では、
1,000万円以上の違いがありますが…。
ところで、統計値には平均値や中央値以外にも
様々にあります。
そもそも、同年代全員を指しているのでしょうか。
同年代でも、都心に住んでいる方と地方に住んでいる方、
あるいは職種やそのときに得ている地位などによって、
収入や支出はバラバラなはずです。
それを乱暴に一つにまとめた数字を、
あなたは知りたいのでしょうか?
答えは全て「NO」です。
ちょっと意地悪な質問をしましたが、
本質を理解していただくために
あえてこういうお話をしました。
平均値や中央値は単なる「代表」であって、
それが正解ではありません。
よく考えれば分かってくることですが、
我々の心理上、こうした数字によく騙されます。
(心理学でアンカー効果といいます)。
なので、特によく使われる「平均」という数字には
気をつけるようにして下さい。
それは「他人事」というぐらいのスタンスで
見れるようになると、いいと思います。
ただし、傾向ぐらいは掴んでおくといいと思います。
例えば、平均値にしても中央値にしても、
年代が上がるにしたがって増えていますよね。
ということは、貯蓄をしているか、収入が増えていくか、
はたまた相続で資産を得たのか、理由はともかくとして
年を取っていくと資産は増える傾向なんだな、
というのはわかります。
ただし、あくまでも「全体の傾向が」という意味であって
あなたご自身がそうあるべきかどうかとは
まったく別のお話。
統計値というのは、
実はそれぐらい「ドライ」な付き合いが
ベターなのです。
「みんな」と比較することにほとんど意味はありません
ではあなた個人の話に戻ったとして、
こうした「みなさん」とどう付き合っていくのか?
僕の考えでは
「特に「みなさん」とは付き合わなくて構わない」
と思っています。
だって、人の人生なんて、ホントそれぞれですし、
一人一人というのは、本当にバリエーション豊かで
全然違います。
これは、
僕がお客様のライフプランを作成していても、
とても良くわかります。
資産額はもちろん、収入、支出、
家族構成も、境遇も、土地柄も、
もちろんあなたの性格や気性も…。
ぜんぶバラバラで、
一つとして同じ状況はありません。
それなのに、資産額を合わせよう、
収入を合わせよう、支出を合わせよう…。
ぜったい、無理です(苦笑)
仮にですよ。
じゃぁ同年代の資産額(中央値)よりも
多ければ安心でしょうか。
あるいは少なければ、不安でしょうか。
もちろん、
平均値を知りたいと言われれば僕もお答えしますし
平均を知っておくことは無意味とまではいえませんから、
知っておいても損はないと思います。
でも、その数字を根拠に判断してしまうのは
どうかと思うんです。
人生の設計をしようというときに、
そんな乱暴な判断あるか…
って思いませんか。
誤解のないように付け加えておきますが、
人付き合いをしなくていいという意味では全然なくて
あなたの「人生」を「みんな」に合わせる必要はない、
という意味です。
こうして考えていけば、
「みんなと同じような生き方」というのが
とても非現実的で異常だということが
わかりますよね。
企業に就職して、
子どもは一人か二人、
夢のマイホームを手に入れ、
定年まで勤めたあとは
十分な年金をもらって
悠々自適に暮らす。
「こんな価値観、いまどきあるか!?」
と思われたあなた、正解です。
でも「平均値」や「みんな」という場合には、
実は暗にこれを指していることが多いのです。
こういう典型的な「みんな」に
合わせる必要はまるでありませんし、
合ってないからと言って、
心配する必要も全くありません。
「みんな」や「平均」という言葉に魔力があるのは
認めます。
やっぱり、気にはなりますよね。
だけど、それはまるで陽炎(かげろう)のように、
つかもうと思ってもつかみきれない、フワフワしたものですし、
仮につかめたとしても、個性あふれるあなた自身にとって、
人生を豊かにするために、何の参考にもならないでしょう。
だから、そんなもの追いかけないで、
しっかりとあなたご自身の心の声に
耳を傾けてください。
その上で、
心の叫びみたいなのが聞こえてきたら、
それは真摯に受け止めて欲しいと思います。
それがいちばん、
人生を豊かに、ハッピーにしていくための本質ですし、
一見、回り道に見えますが、実は一番の近道だと思います。