カブドットコム証券のFUND DRESSを嫁が実践!アイデアは斬新だけど投資は別と考えるべき?
こんにちは。林FP事務所の林です。
カブドットコム証券が、なにやら変わったことを始めたようです。
いわく、つみたてNISAの認知はされてきたが、まだ理解度は低いと。つみたてNISAの普及推進のためには、「難しそう」「ファンドが選べない」という心理的障壁を打破する必要があり、ドレスを選ぶ感覚でファンドを選べるサービスを開始した。
とのことです。このFUND DRESS、嫁さんの意見を交えながら、ちょっと真面目にFP視点でレビューしてみました。
目次(タップでジャンプ)
カブドットコム証券のFUND DRESSを実践レビュー
FUND DRESSのニュースリリースを確認し、実際に使ってみました。
FUND DRESSとは
いろいろなデザイン(色彩)のドレスを選べば、色彩心理学を元にあなたにあったファンド(投信)が選べます、というコンセプトのカブドットコム証券オリジナルサービスです。
ニュースリリースはこちら
本日「NISA(ニーサ)の日」にカブドットコム証券の「つみたてNISA」利用促進プロジェクト「FUND DRESS」を開始!好きな色のドレスを選ぶだけで、自分の価値観にぴったりのファンドがわかる!
多くの方々が抱く「つみたてNISA」に対する「なんとなく難しそう」という心理的障壁と、「ファンドを選べない」という行動的障壁をクリアするため、「FUND DRESS」は誕生しました。
ということで、ドレスを選ぶ感覚でファンド選びができることを目指す、というのがFUND DRESSの目的のようです。
色彩心理学とは?
僕は色彩心理学の専門家ではないので、ネットで調べた範囲の話にとどまりますが、色彩には「表現感情」と「固有感情」があります。
表現感情とは、ある色を好きとかキライとか、個人的な好みのことです。恐らくFUND DRESSはこの表現感情を応用していると推測されます。
対して固有感情とは暖色系の色は温かみを感じて…という、それぞれの色が固有で持っている一般的な心理効果のことです。学校の美術の時間に習いましたね。
この固有感情があるために、例えば寒さを感じている人に赤や黄色などの暖色を見せると、良い印象を与えたり、そちらに誘導できたりします。これが色が持つ誘導効果。
誘導効果はよくマーケティングにも応用されますが、そのときの状態によって個別の反応が変わる点にも注意が必要です。
例えば暑いと感じている人は一般に寒色系を好むでしょうし、逆に寒いと感じていれば暖色系を好むでしょう。真夏の暑い時に、青地に氷と書かれた旗は目に付きますし、寒さを感じる季節になれば赤提灯が恋しくなります(ちょっと違う?笑)。
まぁ、個々人によって多少の違いはありますが、気温、満腹度、ストレス、眠気…季節など、時々刻々と変化するさまざまなパラメータによって、選ぶ色は変わるかもしれないということです。
実際にFUND DRESSを試してみた結果
投資は誰でも始められるものですが、好きなドレスを選ぶという時点で、まず男性には難しいと感じました。(苦笑)
この辺のターゲティングは、大丈夫なんだろうか…。
まぁ最近は女装をする男性も増えていますし、LGBTの概念も浸透してきてますので、一概に男性だからできないと決めつける必要はないです。…ですが、あいにく僕はドレスを選んだり着たりという習慣が一切ありませんので、皆目見当が付きません…。
…ということで、嫁さんの協力を得て先に進むことにしました。
使い方は簡単、30着のドレスから一つ、好きなのを選ぶだけですので、あえて僕の方から詳しく説明せず、いきなり実践してもらいました。
しかし開始早々
「どういうシチュエーションで着るドレスなん?」
という質問が!それは僕にも分かりません…笑
何度か行ったり戻ったりしているうちに、「あー、好きな色を選ぶのね。」ということに気づいたようでした。
ドレスを選ぶという行為が、色だけではなくて、様々な条件を考えて行うものだ、ということを改めて教えてもらいました(僕にはそういう発想がありません…^^;)
で、選んだドレスが「紫」、「青」、「白」の3色のドレス。
- 紫…直感力、神秘的、その他
- 青…冷静、慎重、その他
- 白…真面目、スタート、その他
だとのことで、あなたにオススメのファンドはこれ!というのが、出てきました。具体的に何かというのはネタバレになるので、気になる人は実際にやってみてくださいね。
さて、ここからは実際にやってみた嫁さんの意見も交えながら、FUND DRESSについてコメントしていきます。
FUND DRESSの考えられるメリット
どんなことでも、新しいことは多少の批判にさらされるものでしょう。まだ始まったばかりですから、成功するとも失敗するとも、結論付けるのは早すぎます。
ファンド(投信)を色彩心理学に基づいて選択するというアイデア自体は斬新ですし、斬新なアイデアを実現した気概は、一定の評価をされるべきでしょう。
今まで投資というのは理屈が多すぎて難しい、と感じていながらも、NISAやつみたてNISAという言葉をよく耳にすることで「始めてみたい」と思っていた層には訴求できるかもしれません。
FUND DRESSがなければ、そもそも投資を始めることが無かった人が、投資の経験を始めるという点においては、メリットがあるといえるのでしょうか。
実際に嫁さんの様子を見ていると、確かにドレスを選ぶのときは嬉々としてました。そういう、いわばエンターテイメントとしての価値はあるのかもしれませんね。
考えられるデメリット
ただし、このサービスに少々違和感を感じるのは僕だけではないと思います。
目的が違うのではないか?
スイマセン、ここからは理屈が始まるのですが(笑)、そもそもドレス(色)を選ぶという行為と投資という行為の目的が異なっています。
実は嫁さんも同じ意見で
と言ってました。
ドレスの色を選ぶのは、それを着て楽しむためです。
一方で投資というのは、楽しむために始める、というものではありません。増えたら楽しいかもしれませんが、減ることもあるのでその時は凹むかも知れません。
「いや、私は仕事のためにドレスを選ぶ!」という意見もあるかもしれません。楽しむためかどうかは分からない、ということなら、次のような話はどうでしょう。
例えばドレスは消耗品です。一定期間、一定回数楽しんで、ボロボロになったら古着屋に持っていくでしょう。
一方でファンドはその逆で、消耗どころか成長を期待するものです。時にボロボロになったように見えるかもしれませんが、だからといって古着屋には持っていきません。それが長期投資です。
このように、ドレス選びとファンド選びは、その目的が違うのではないでしょうか。
状況によって選択する色が変わる?
もう一つ考えられるリスクが「色彩には人を誘導する力がある」ということです。
これは冒頭でも指摘したことですが、例えば赤や黄色といった色には、元気を出したりモチベーションを上げたりする効果があります。逆に緑や青といった色は、落ち着かせたり深く考えさせたりする効果があります。
このように、色自体に人の行動や考えを誘導する効果があり、同じ人であってもその時の気分と状況によって選ぶ色が変わってくるでしょう。
例えば退屈でモチベーションを上げたいと(明示的にせよ、暗にせよ)思っているときは、明るい色を選びがちかもしれません。
逆に、ストレスで疲れているときには、青や緑などの落ち着いた色を選ぶ可能性がありますよね。
このように、時々の状況や気分によって結果が変わる可能性のあるものを、長期的に付き合うことになるファンド選びに結びつけて良いものかどうかが、そもそもの疑問点としてあります。
これに関しても僕と嫁さんは一致してて、
と言ってました。
つみたてNISAは投信の乗り換えがしにくい
では状況や気分によってファンドの選択が変わることを仮に受け入れたとして(決してお勧めはしませんが)、もう一つ課題があります。
その場合、状況が変われば投信を入れ替えないといけませんが、iDeCoと違い、つみたてNISAは乗り換えがしにくい制度となっています。
【保存版】2018年から始まるつみたてNISA、10のメリットとデメリット
新たに積み立てる投信は自由に選択できますが、既につみたてた投信は継続保有か売却しかできません。ですので、積立てる投信を頻繁に変更すると、つみたてNISA口座内の銘柄数が増えて、管理がどんどん煩雑になってしまうのです。
iDeCoはスイッチング(乗り換え)ができる制度になってるのでこの問題は軽減できるのですが、つみたてNISAでは問題として残ります。
このようにドレス選びとファンド選びは様々な点で対立しやすい関係にありますので、もしユーザーが投信選びを「ドレスを着るのと同じ」「色を選ぶのと同じ」だと考えて購入するなら、後々その期待が裏切られる可能性があります。
もちろんそのことを承知の上で利用するなら、これもファンド選びのツールの一つとして使うことに問題はないと思います。
が、果たしてそれを理解できている人が、そもそもFUND DRESSを使うかどうかですね。ニュースリリースからは、それを理解していない層をターゲットにしているように、僕には見えます。
そこのミスマッチに、リスクが存在しているのではないでしょうか。
カブドットコム証券さんがそれを承知でサービスを提供しているのか、あるいは今後テストをしながら改善していくのかは、まだ分かりませんね。
FUND DRESS まとめ
願わくは、僕はいろいろな意味で日本でも長期投資の人口が増えればいいと思っていますし、その一つの入り口としてFUND DRESSのようなものがあるのだと思います。
アイデアは斬新ですし、投資なんて個人の自由ですから、その事自体が否定されるものではないです。
ただ、上で書いたようなリスクも想定されるので、FUND DRESSにより一時的に投資人口が増えたとしても、長期的に失望する人が増えるのであれば結果的に残念なことになるでしょう。
まぁ、それほど心配する必要はないのかもしれません。嫁さん曰く、
というのが、結局、的を得ているのだろうと思います。
なんでも、あまりに難しい印象があると誰も近寄れなくなりますので、簡単、気軽というイメージも時には大切です。カブドットコム証券のニュースリリースにもあるとおり「なんとなく難しそう」というイメージを払拭するのには、一役を買っているとも言えるでしょう。
ですのでとりあえず試しに1回やってみる、というのはもちろんいいと思います。
ただこれだけで「ファンドを選べない」という行動障壁を乗り越えるまでは、正直難しいと思います。
あなたの貴重なお金を預けるわけですから、本気で投資を始めたいなら、こうしたツールに頼るだけではなく、お金や投資のことを基礎からしっかり学ぶことをお勧めしますね。