「高額療養費制度が使えなくなるかもしれないから、医療保険が必要ですよ」と言われたことはありませんか?
こんにちは。林FP事務所の林です。
想像してください。今あなたは、保険代理店に来ています。
「今は確かに高額療養費制度がありますが、
将来、使えなくなる可能性だってありますよね?
だからこそ、今、医療保険に入っておく必要があるんです!」
こう自信たっぷりに言われたら
「確かにそうかも…」と思いませんか?
これ、大間違いですよ。
目次(タップでジャンプ)
医療保険と高額療養費制度なんて、全く関係ありません。
医療保険の必要判断に、高額療養費制度は全く無関係で、
言葉は悪いですが、かなり契約者をバカにした話ですね。
だって、高額療養費があるかないかで、
医療保険の支給額は変わりません。
だったら、その制度が
将来なくなるかもしれないかどうかなんて、
検討する必要はないんじゃないでしょうか…?
…?
分かりませんか。
では、例えばですよ。
医療保険が必ず儲かると分かっている商品だとします。
(そういう商品はほぼありえませんが、仮に、あるとします)
だったら、高額療養費制度とか関係なく、
必ず保険に加入しませんか?
逆に、試算したところ、医療保険で
損をするだろう、ということが分かった場合。
その場合でも、高額療養費制度とは関係なく
契約しませんよね。
もし仮に。
その医療保険が、将来高額療養費制度等の
公的補助がなくなったら、その差額も全額出します!
というのであれば、検討の余地は確かにあります。
ですが、そんなことはありませんよね。
結局、医療保険に入ろうが入るまいが、
高額療養費制度の継続リスクは受け続けるわけで、
そこに変化はないわけです。
高額療養費制度と医療保険を、数式で考えましょう
このような間違った話にピリオドを打つために、
改めて「数字」で考えてみましょう。
数字で見れば、議論の余地は無くなります。
今あなたが、なにか病気の治療のために、
入院するとしましょう。
医療保険からの入院給付金が「I」円で、
高額療養費制度からの給付が「K」円だとします。
医療保険の有無と、
高額療養費制度の有無で
給付金は以下の表のようになります。
高額療養費制度と医療保険は独立して出ますから、
両方あれば単純に給付金は加算されます(I+K)。
で、損得を考える場合、
冒頭のセールスさんは
「高額療養費制度がなくなるかもしれない。
だから保険をかけましょう」
と訴えているわけですから、
高額療養費制度がある場合とない場合それぞれで、
まず保険の有無での差を計算してみましょう。
それが黄色い欄ですが、
いずれも、差額は保険給付金のIだけで、
同じですよね。
つまり、高額療養費制度の有無の影響は全くなく、
その証拠に右下の数字が0となっています。
この結果から、
医療保険をかけようがかけまいが
高額療養費制度とは全く関係ない
ということがわかります。
こういう根拠の無い話を持ち出す保険屋さん(FP)は、
十分、気をつけてくださいね。
セールストークの一つだとは思いますが、
もし本気でこんなこと言っているなら、
逆にその人の(FPとしての)知識レベルに問題があります。
いずれにしても、
真面目に聞くべき話ではありませんね。
こういう、危うく引っかかりそうな話というのは、
実はその辺にゴロゴロしていますので、
非常に警戒する必要があります。
結構な権威者や実績のある人が、
真顔で間違ったことを言っていることも
しばしばありますので、お気をつけくださいね。
医療保険を検討するために必要なこと
じゃぁ、医療保険を検討するのになにが必要な検討材料かというと、
入院給付金(日額)なら、将来どれぐらい入院日数がありそうか?
ということです。
入院給付金に、将来の入院日数の期待値(確率)を
掛け算して、求めてください。
これが出来ないなら、
医療保険を検討する価値もありません。
だって、損得が分かりませんから。
損得が分からない金融商品にお金を出すのは
博打と一緒ですよね。
数万円ぐらいで博打を楽しむのは趣味の範囲ですが、
医療保険は支払い総額が数百万円にもなる金融商品です。
そんな金額で博打をしてはいけません。
一般的には、統計値で見る限り、
入らないほうがお得ですね。
だから普通は現金として貯える方が
合理的になるわけです。
また、給付金が出る最長入院数というのもありますので、
その上限以上は出ません。
こうしたことも、注意しないといけないポイントです。
だから、真面目にしっかりと試算しなければ、
本当にお得かどうかなんて、分かってきません。
(まぁ、その計算がなかなか出来ないので、
保険会社のいうなりになってしまう、
という問題点はあろうかと思いますが…)
さらに、お得かどうかということ以上に
問題があります。
保険の一番厄介なところは、
お金の一番大きなメリットである
「なんにでも使える」という特長を
殺してしまうことです。
もしあなたが高齢になってからも今のまま健康で、
でも、状況が変わったのでサービスのいいところに
移り住みたい、と考えたとします。
でも、そのための費用として
医療保険を使うわけにはいきません。
がん保険も、介護保険も、当然使えません。
そして、それらに支払った保険料というのは、
当然、既に手元から消え去っているわけです。
1ヶ月に1万円の保険料を支払っているなら、
40年後、480万円となります。
結構な金額ですよね。
さらに、40年後インフレしてたとしても、
480万円はまったく増えないわけですから
泣きっ面に蜂状態となってしまいます。
重々、お気をつけくださいね。
保険というのは本当に「いざ」というときだけ役に立つ
医療保険にかぎらず、保険というのは
とにかく一般的に「損」をするものです。
これは保険会社がほぼ必ず儲かるように
商品設計していますので、どうしようもありません。
だったら、保険には何の価値もないのか?
というと、そうではありません。
保険の大切な価値が一つあって、
「どうがんばっても自分で拠出できない金額を出してもらえるなら、価値がある」
ということです。
例えば、定期(一定期間)の生命保険などは
良い例です。
月々数千円の保険料で、
いざという時に何千万円と保険金が出ますから、
助かるわけです。
もちろん、損得で見れば、平均的に損にはなります。
ただし、いざというときににっちもさっちもいかないリスクを
回避するための手数料だと考えるわけですね。
一方、ちゃんと預貯金で備えておけば、
医療費をどうがんばっても拠出できない、
ということは、ありませんよね。
だから医療保険は、
保険としての価値が低い、
というわけです。
医療で最強の保険は「貯蓄」
もし、どうしても医療保険で備えたいのであれば
以下のような条件であれば検討の余地はあります。
- まだ蓄えがなく、若い時代だけの大病に備えるもの
- 先進医療など、公的保険がきかず、かつ高額な医療部分のみ保障するもの
- 超長期の入院時のみ保障するもの
こうした医療保険は、給付金がなかなか出ません。
それもそのはずで、起こりうる確率が
非常に低いからです。
ですが、一旦起きると結構大変ではあります。
そういうものであれば、保険の意味が出てきます。
それ以外の部分、例えば老後の
通常の医療に保険で備える必要はありません。
そういうのは、必ず
「貯蓄」で備えていきましょう。
そのためにも、今から家計管理の
習慣をつけておくことが大切です。
マネーフォワードなどは僕も使っていますので、
便利なツールをうまく使って、貯蓄習慣を
身につけてくださいね。
本記事のコメントをメールで頂きました。
引用許可をいただきましたので、掲載いたします。
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いつもブログを拝見しております。
なぜか(!)私自身が検討中の課題についてのブログとなっており、とても、とても助かっております。
消費者の立場からの発信であること、具体的な数字を挙げていらっしゃり根拠があることが、信頼できます。
医療保険は、年齢を重ねるほど、検討課題になります。増して周囲に大病をした方がいると、感情的にも、「保険、入っておかないと!」となります。林FPは、極めて冷静に、客観的な意見を述べてくださっております。
賢明な選択ができます。
いつもありがとうございます。
ライフプランもまた時期が来ましたら、お願いしたいと存じます。
どうぞこれからも宜しくお願いします。
ますますご活躍くださいますように!
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コメント、ありがとうございました!