金融庁の「NISA制度の効果検証結果」について、まとめと分析してみました。
![](https://h-fpo.com/wp-content/uploads/2016/11/l_085.png)
2016年10月、
金融庁から「NISA制度の効果検証結果」
が発表されました。
NISA制度が2014年に始まり、
今年も終盤ですからほぼ3年が経過。
非課税期間は5年ですので、最初の(2014年)の
投資の非課税期間はあと半分を切った計算です。
このタイミングでNISA制度について
改めて考えておくのもいいかと思います。
目次(タップでジャンプ)
NISA制度の効果検証結果(平成28年10月)について
この検証結果はNISAの現状について
おおまかに以下の2部構成でまとめられています。
- NISA口座数や資産残高など、NISA口座自体の現状
- 投資家層や金融リテラシー、金融機関の取り組みなど、NISA利用者と提供者の現状
詳しくはレポートを見ていただくとして
この記事では僕が気になった所を中心に
まとめていきます。
NISA口座は増えているが、実際どのように使われているか?
NISA口座の開設数は2016年6月末に
1,030万口座を突破しており
右肩上がりで増えています。
ただ、当初2014の伸びより伸び率は鈍化しており、
どこまで口座数が伸びるかは不明ですね。
一方で買い付け額は着々と伸びていて、
これは積立の効果だと思います。
気になる点として
ジュニアNISA口座は伸び悩んでいます。
18歳まで払い出し不可というのが
心理的な壁になっているのかもしれません。
また、NISA口座も全てが使われているのではなく、
なんとなく開いてみたけど、使わないという口座が
半数以上を占めているようです。
![screenshot-9](https://h-fpo.com/wp-content/uploads/2016/11/ScreenShot-9.png)
僕のお客様の中でも、
「お知らせが届いて、口座開設しないといけないのかと思い、
実際開いたけど、使い方が分からなくて放置しています!」
という方がおられて、
勘違いで開設された方も
多かったのかもしれません…。
まぁ、恋も勘違いからといいますから、
開いておけば将来使うこともあるかもしれません。
(ないかな)
NISA口座内の投資信託の売却率は低い
次いで、NISA口座内の金入商品の割合は
投資信託が約7割と大半を占めています。
しかも、投資信託の売却率は約10%、
個別株式の売却率は41%ですので、
他と比べて低い状態のようです。
どういうことかというと、
恐らくNISAで投資信託を買い付けるような人は、
毎月積立のような使い方が多く、
特に短期的な売却の意識が無いのかもしれません。
一方で、一般的な証券総合口座とNISA口座とでは、
金融商品の保有期間に以下のような違いがでています。
![screenshot-11](https://h-fpo.com/wp-content/uploads/2016/11/ScreenShot-11.png)
この表は各年代で一般の証券総合口座とNISA口座で、
どれぐらい投資信託を保有するつもり?を聞いた回答です。
黒い点は平均を表していて、
線が右下を向いていればNISAの方が保有期間が短く、
線が右上を向いていればNISAの方が保有期間が長い、
という意味です。
これをみると、20代以外は全て右肩下がりで、
「NISA口座だと5年以上は保有しないよ。」
という意図が透けて見える、ということのようです。
実際のところどうかは分かりませんが、
金融庁としてはこのアンケート結果から、
NISA口座の非課税期間を延長したり、
恒久化につなげていきたいんだと思います。
これは僕も賛成したいところ。
職場積立NISAは要注意
職場積立NISAに関するヒアリング結果もありました。
主要証券会社10社、3メガ銀行へのヒアリングですが、
13社のうち8社が取扱中もしくは準備中で、
前向きな姿勢が伺えます。
一方、投資家として注意しないといけないのは
本来NISAというのは自分で金融機関を選ぶべきものであるのに対し、
職場積立NISAの場合はその選択肢が一択になってしまい、
自由度が奪われる危険性もあるということです。
これについて、過去このような記事も書きました。
↓
https://h-fpo.com/?p=1132
NISA口座の開設数を一気に拡大するには
効率的でいい方法だとは思いますが、
本来NISAは国民の資産形成に資するものとして
始められているはずです。
ですので、投資家保護や選択の自由という観点が
奪われないかどうかについては是非
慎重になっていただきたいところです。
また、記事にもあるように職場で資産形成させるなら
やはり確定拠出年金が第一の選択肢として
良いと思います。
職場に確定拠出年金がなければ、
2017年から個人型確定拠出年金(iDeCo)も
制度改正で使いやすくなりますから、
個人としてはそちらを検討していくのもアリです。
iDeCoの2017年からの制度改正については
こちらの記事も参考にしてください。
↓
https://h-fpo.com/?p=4235
NISA制度の効果検証結果のまとめ
NISA口座は伸びてきてはいるものの、
課題も浮き彫りになっている、ということのようですね。
課題としては
- NISA口座数は伸びているが、稼働率が低い
- 非課税期間5年ということから、長期保有の意欲が削がれている可能性がある
- 職場積立NISAについては、投資家保護の観点が抜けていないか要チェック
などがありそうです。
当然、金融庁も課題は認識していますから、
来年度の税制改正でも、要望は出しています。
こちらの記事も参考にしてください。
来年2017年からの積立NISA(平成29年度税制改正要望項目)
などについて、要点をまとめています。
↓
https://h-fpo.com/?p=7323
以上、NISA制度の効果検証結果のまとめでした。
参考にしてください。