中小企業が社員の年金を無理なく形成していく方法
今日はちょっと視点を変えて、
中小企業の社員の年金を
どうやって作っていくか、
その選択肢の一つである
個人型確定拠出年金へ拠出できる
小規模事業主掛金納付制度(仮称)について
考えてみます。
中小企業で働く個人にとっても、
資産形成に関係のある話です。
マイナス金利で一層苦しくなる確定給付年金
企業年金など、確定「給付」型の年金
(将来の年金額があらかじめ決まっている年金)
の場合、予定利回りが低下すると、
準備金を積み増す必要性が出てきます。
これが企業の手元資金を減らし、
経営を圧迫する要因となる、
と言われています。
特にいまどきではゼロ金利どころか、
(特定の状況下とはいえ)マイナス金利が
導入されるような金融環境ですから、
確定給付年金の採用は、ますます
苦しくなっていくのではないかと
考えています。
もちろん、明日の金利がどうなるかなどは
誰にも分かりませんので、
断定的な判断はできませんが。
小規模事業主掛金納付制度(仮称)
中小企業が社員の年金を作る一つの選択肢として
小規模事業主掛金納付制度(仮称)が創設されています。
2015年度税制改正大綱(財務省・ただしリンク切れ)によれば
- 社員に個人型確定拠出年金に加入してもらう
- 会社から個々の確定拠出年金口座へ拠出する(損金扱い)
という扱いが可能になります。
これを小規模事業主掛金納付制度(仮称)といいます。
(まだ、実施はされていません。
2016年の通常国会で審議予定)
確定拠出年金口座は
- 拠出時、非課税
- 運用時、非課税
- 払い出し時、税制優遇
という、三拍子そろった税制優遇口座で
必然的に長期投資となる老後の資産形成に
フィットするように設計されています。
ただし60歳まで原則払い出し不可等の
制約もあります。
詳しくはこちらもご参考。
↓
2017年からほぼ皆年金?個人型確定拠出年金(個人型DC)の基本を押さえておこう。
が、確定拠出年金制度はかれこれ
もう15年の歴史になるようですが
いまだに導入企業、個人数が限られているのは
制度の複雑さ、使い勝手の悪さがあったと思います。
(もちろん、運営管理機関が宣伝してこなかった、
という理由も大いにありそうですが)
今までも企業型確定拠出年金という制度があり、
企業が各社員の確定拠出年金口座へ
拠出することはできました。
ただし、導入や維持コストが大きいことから、
結局、中小企業には敬遠され
主に中〜大企業で実施されてきたんですね。
税制改正で、
ここの部分のハードルが低くなり、
確定拠出年金が拡大していく
可能性があります。
社員(個人)にとっては
引き落とし口座等の面倒な管理をせずに
会社が拠出してくれるのは便利でしょう。
また「会社から拠出するから確定拠出年金口座作って」
といわれれば、社員側の納得感も高まると思います。
(これが「個人で任意に確定拠出年金」となると、
なかなかその重い腰が上がらないわけです…)
会社にとっても、損金扱いにできますから
少なくともデメリットはなさそうですね。
会社から確定拠出年金口座への振り込み事務が発生しますから、
多少の事務コストはかかりますが、
既に給与振込等のワークフローがあるなら、
それに準じたワークフローにすればよく、
それほどのコスト増にはならないと思われます。
個人型確定拠出年金には、課題もあります
個人型確定拠出年金を始めるにあたって、
課題もあります。
- (社員は)運営管理機関を選択しないといけない。
- (社員は)投資商品を選択しないといけない。
あくまで個人型ですので、
個人が運営管理機関と投資商品を
選んでいく必要があります。
個人型確定拠出年金の運営管理機関といってもいろいろあり
その特徴は様々です。
(参考:確定拠出年金(個人型DC)、運用商品とコストを徹底的に比較)
低コストのインデックスファンドがメインであれば
ある程度絞られてくるとは思いますが、
全ての人(社員)にインデックス運用を
押し付けるべきものでもありません。
(理屈上、インデックス運用はベストに近いですが、
投資は、あくまで個人の自由ですので)
運用を押し付けるのではなく、
投資教育を通して、個人が自然と
無理のない運用を選択していくのが
理想ではないかと思います。
そうなると、社員さんからの
「どこで確定拠出年金口座を開いたらいいんでしょうか?」
「具体的には、どのような商品で運用したらいんでしょうか?」
という問い合わせに応えるために、
会社側でも情報収集や投資リテラシーの向上が
今後求められていくと思います。
そうした課題がある、
ということも同時に認識しておく
必要がありそうです。
まだ時間がありますので、
じっくり調べて準備してみてください。