お金と経済と暮らしを結ぶ・ゆるトーク 「エンゲル係数」
こんにちは。林FP事務所の林陽子です。
このシリーズは、その名の通り、私達の暮らしにお金の知識や政治経済のニュースがどう関わってわっていていくのかをみなさんと一緒に考えていくシリーズです。
表現がざっくりになることもありますが、極力わかりやすくをモットーに、お話しするようにしていけたらと考えています。
今回のテーマは、「エンゲル係数」についてです。家計の話題でよく聞くこの言葉、日常会話でも何となく使っています。今回は意味を再確認した上で、エンゲル係数の計算をしてみようと思います。
目次(タップでジャンプ)
「エンゲル係数」を詳しく解剖
食費の割合ということはなんとなくわかるけど…
実はもうしっかり日常用語として定着しているこの言葉ですが、意味や計算方法を改めて確認してみましょう。
エンゲル係数が生まれたのは1857年、ドイツの社会統計学者エルンスト・エンゲルが論文発表内で用いたのが始まりです。とても古くから使われている数字なのですね。
エンゲル係数とは、「家計の消費支出にしめる食料費の比率(%)」のことです。
ですから計算式は、
エンゲル係数(%)= 食費 ÷ 消費支出 × 100 となります。単純な数式ですね。
消費支出とは何が含まれているの?
さて、数式はわかったものの、式の中にある「消費支出」とは何だ?という疑問が湧いてくるかと思います。
消費支出とは、日常生活を維持するための商品やサービスの購入費のことです。衣食住に関する費用や車の購入費や維持費、交際費、仕送りなども含まれます。また、自動車にかかる税金や消費税も含みます。
そして、消費支出に含まれないものとして、
- 非消費支出:所得税・住民税・社会保険料
- 住宅ローンの返済・民間の生命保険料・預貯金・資産運用
があります。計算する場合は、上記を入れないように気をつけましょう。会社員の方であれば、手取り収入のうち生活するために使った金額という認識で良いかと思います。
計算してみよう
下記は総務省の家計統計、2022年の二人以上世帯のうち勤労者世帯の平均実支出を大まかに図にしたものです。
この数字を用い上の数式を使って計算してみると、エンゲル係数は、
80,502円 ÷ 320,627円 × 100 = 25.1%(小数点2位以下切り捨て)
となります。平均値ではおおよそ消費支出の1/4が食費ということなのですね。
家計簿がお手元にある方はご自分のエンゲル係数を計算してみましょう。
「エンゲル係数」は生活水準を表す?
上に挙げたエンゲルの論文では、所得が上昇すると係数が下がる傾向にあることを論じています。これを「エンゲルの法則」といいます。
しかし現在では、地域や家族構成によっても状況は異なるため、一概にエンゲル係数が生活水準の指標となるとはいえません。
例えば、上の2022年の二人以上世帯のうち勤労者世帯の年収別エンゲル係数データをピックアップしたものを見てみましょう。
このように、大まかには年収が上がればエンゲル係数は小さくなる傾向はあるものの、必ず反比例するとはいえないということなのです。
ただ、自分の家庭の係数を知り平均値と比較してみることで、食費の傾向は知ることができそうですね。
食費は切り詰めるべき?
では、仮にご自分のエンゲル係数が平均より多かったとしても、食費を切り詰めるべきかと言えば、そうではありません。食費は食事、つまり家族の身体や健康を守る大事な費用だからです。
例えばスポーツをしている家族がいる、食べ盛りのお子様がいる、持病のケアで食事に制限がある等、切り詰めないほうが良い場合もあります。怪我や病気で健康を損なうことは結果的に医療費の増大や収入減少につながってしまうこともあります。
節約をしなければいけない状況であれば、まずは家計全体を見ましょう。
食費の切り詰めを検討するにしてもまずは外食が多すぎないか?食材を余らせていないか?からチェックするようにして、家計も健康も守っていきましょう。
まとめ
今回は比較的身近な言葉、エンゲル係数について考えました。
- エンゲル係数の計算のしかたはとても簡単。でも「消費支出」は何を指すかに注意しましょう。
- エンゲル係数 = 生活水準を表す とはいいきれません。
- やみくもに食費を削るのは少し待って。まずは家計全体のチェックからはじめましょう。
とはいえ、物価がどんどん上昇していくこの頃です。食費も減らしていくことが求められる状況になっていくかもしれません。「切り詰める」といえば窮屈な印象ですが、「費用を抑え効果的な食事づくり」を目指していきたいですね。