長期投資向けファンドとETFの比較(その1)
こんにちは。林FP事務所の林です。
損をしないNISAの活用法や、NISAで使えるインデックスファンド比較記事を読んでいただければ、NISAの基本的な活用法やNISAで長期投資したいファンド(投資信託)が理解できるかと思います。
でも、これだけではまだまだ不十分です。
NISAの年間購入枠はたったの100万円。しかも回転売買には利用できないため、必然的に買ったら長期的に保有する「長期投資」のスタイルとなります。実はこの「長期投資」のスタイル、ほとんどの日本人は慣れておらず、長期投資に臨む場合に必要な知識や心構えを知らないことも多いのです。そもそも長期投資ってなに?どれぐらいの期間なら長期といえるの?といったところから始めなければならない方も多いでしょう。
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資産形成は必然的に長期投資。だからこそ外せないポイントがある。
長期投資に必要なポイントは3つあります。
長期投資に向く商品を選ぶ
とても当たり前のことですね。でも、実際にこの当たり前ができないことがすごく多い。例えば
このベンチャー企業、今ものすごく伸びている。10年後には、株価がウハウハなんじゃないか?
と確信して買ってはみたものの、株価の乱高下が激しすぎてとてもじゃないけど長期保有できず、結局途中で売却した(で、売却後に急上昇)。。。とか、
あるいは、当たり前のことですが投資する商品そのものの期限が短ければ、長期投資などできるはずがありません。「とにかくファンドならリスク分散されていていいだろう、と思って買ったが、よくよく目論見書を確認したらファンドの設定期間が短く、あと3年で解約となるじゃないか!」というのは陥りがちなミスです。
適切にリスク管理ができて、かつ長期保有しても大丈夫な商品を選ぶようにしないといけません。
コストを低く抑える
NISAで使えるインデックスファンド比較記事では、NISA口座で投資したファンドを比較検討しましたが、これらは全てノーロードかつ信託報酬が(調査時点で)最も安いものになっています。
インデックスファンド同士を比較したのにはワケがあって、ほかのアクティブ運用ファンドの場合、別々の商品が同じパフォーマンスであることはまず無く、そのようなパフォーマンスの異なる商品の信託報酬コストだけを比較してもあまり意味がないからです。
その点インデックスファンドであれば、ベンチマークさえ同じにすればトラッキングエラー(ベンチマークからのずれ)を除いてパフォーマンスは同じとなります。同じパフォーマンスの商品であれば、その中から最もコストの安い商品を選ぶのが長期投資のセオリーです。
長期投資の場合、期間が長くなればなるほど複利効果が強烈に効いてきます。この複利効果を最大限生かすためにも、コストについて敏感になる必要があるのです。
もうひとつコストにシビアにならなければならない理由があります。
これは様々な投資の教科書にも出てくるのでご存知の方も多いと思いますが、投資のパフォーマンスの中で唯一確実にコントロールできるのがコストだからです。将来のリターンは期待するしかありません。しかし将来のコストは商品と買い方を決めれば全て計算できます。ですから、将来の確定コスト(確定損失)を最小限にとどめるというのが、基本のキというわけです。
ポートフォリオを組み、リバランスを行う
ポートフォリオの組み方については別記事で書きたいと思いますが、一旦ポートフォリオを決めたなら、ポートフォリオ内の各商品の評価額が、当初想定した割合となるように定期的にリバランスします。
これも長期投資の特徴の一つです。リバランスを行うことにより、自動的に評価額の低いもの(値が下がったもの)を多く買い、評価額の高いもの(値が上がったもの)を少なく買うことになります。
なお、通常の特定口座ではリバランスするときにファンド等を売却すると、もし利益が出ていたときには課税されてしまい、投資効率が非常に(本当に非常に!)悪くなってしまうため、リバランスのための売却というのはお勧めできません。
NISAではこの課税部分が無いため売却によるリバランスもアリっちゃありなんですが、リバランスのために貴重な投資枠を使ってしまうというのももったいない話です。
ですので売却はせず、新規購入額を調整することでリバランスしていきましょう。
ポートフォリオの構成や、リバランスの方法などについては方程式のように決まった形があるわけではありません。ですが基本的な考え方を理解し、計画的に実行することが長期投資でパフォーマンスを高めるためのポイントとなっていきます。
この記事ではこの中でも「コスト」を抑えるための方法をご紹介していきます。商品の選び方や、ポートフォリオの実際についてはまた別の記事で書く予定です。
じゃぁ信託報酬の安いファンドがいいんだね!
と、その前にちょっとまってください。信託報酬を議論する前に、まずコストの種類について考えてみましょう。コストには大きく二つ、初期コスト(販売手数料等)と、継続コスト(信託報酬)があります。
ん?ノーロードファンドなら、販売手数料ゼロなのでそこは気にする必要は無いのでは?
とお考えかもしれません。確かにファンドだけで考えるなら、ノーロードファンドで信託報酬が最も低いものを選べばコストを低く抑えられます。
ただ、それはファンドの中だけでの話であり、ETF(上場型投資信託)と比較する場合はそれだけでは不十分となります。ETFの場合、株式売買手数料がファンドの販売手数料に相当します。
ではそれぞれのコストについて、簡単に見ていきます。
初期コスト(販売手数料、売買手数料)
これはファンドやその他の証券を購入する場合に最初(と最後)にかかる諸費用のことです。ファンドであれば販売手数料、株式やETFであれば売買手数料として徴収されます。
気をつけなければならないのは、ファンドは購入時にしか手数料がかからない(信託財産留保額については性格が異なるので手数料には含めません)一方で、株式やETFは買うときと売るときの両方で手数料を取られる点です。
考えてみれば当たり前ですが、意外と忘れてしまうことが多いので気をつけておきましょう。
もうひとつ言っておかなければらなないのは、まったく同じファンドでも販売手数料が異なる場合があることです。証券会社間で販売手数料が異なることは稀だと思いますが、証券会社と銀行間で異なることは普通にあるようです。
もちろんこれは違法ではなく、販売手数料は販売者が自由に設定してもよいことになっているからです。例えば町の家電量販店でも、店によって同じ商品の値段が異なるのと同じ理由です。
ただし、投資家もあまり調べずに銀行の言うことは正しいと信じ込んでしまい、結果として高い販売手数料を払わされるケースもあるようです。これはあまりいい傾向であるとは言えないでしょう。窓口で相談する場合は即決せずに、一旦持ち帰って同一商品が他の証券会社でも買えないか、よく比較してから購入するようにしましょう。
継続コスト(信託報酬,、監査報酬)
ファンドの維持には、毎年継続的に信託報酬という費用がかかります。これは所有しているファンドの基準価格(評価額)に対し、0.1~3%程度の額を費用として毎年自動的に徴収するものです。以前は販売手数料しか気にしていなかった方が多いですが、最近ようやく信託報酬についても多くの方が注目されるようになってきたようで、非常に良い傾向なんじゃないかと思います。
初期費用と異なり継続コストは保有している間ずっとかかることになりますので、長期投資の場合は必然的に大きなコストになってしまいます。特に積立投資の場合ですと、毎年累積的にこの継続コストが増えていく可能性が高く、たとえ0.1%であっても低い方がコストメリットが高くなります。
信託報酬は証券会社のファンド買い付け画面や目論見書に表示されていますので、それぞれのファンドの信託報酬がどれぐらい違うのか、いろいろ比較してみると面白いと思います。
一般的に、インデックスファンドのようにファンドマネージャのスキルがあまり問われない、シンプルなファンドは信託報酬が低く、アクティブファンドやいくつものマザーファンドを束ねるファンド・オブ・ファンズのような複雑で運用の難しいファンドでは信託報酬が高くなる傾向があります。
どちらがいいか悪いかは個々のファンド別に判断する必要がありますが、よほど好成績を収めているアクティブファンドでない限り、上記の理由により信託報酬の低いファンドを選ぶのがいいでしょう。パフォーマンスの良しあしについては別の記事で書きますので、ここでは省略します。
継続コスト(分配)
信託報酬とは性格が別になりますが、分配金にもコストがかかります。
分配金には2種類あって、普通分配金と特別分配金というのがあります。じつはこの両方とも、あなたの首を絞める元凶になっているといえば、どう思いますか?
いやいや、舐めてもらっちゃこまる。普通分配金に税金がかかるのは知ってるよ。その分のコストってわけだよね?
はい。
確かにおっしゃる通り、普通分配金には税金がかかってしまうので、その分パフォーマンスが下がってしまいます。特に長期投資の場合、分配金も再投資に回して福利効果を最大限生かすというが常識ですから、毎月分配なんてのはもってのほかなわけです。
で、特別分配金についてですが、こちらは元本から支払われるお金ですので、当然税金がかかりません。
ですが、こちらにも事務手数料という見えないコストが内蔵されています。
もちろん、目論見書には事務手数料なんて一言も書いていません。しかし、実際に中で働く人のことを想像すれば、事務手数料が無いなんて考える方がおかしいわけです。そしてもちろん、この事務手数料は信託報酬の中に含まれています。
ということで、毎月分配型なんてファンドがあったら、端から無視するようにしてください。どうしても毎月お金が必要なんであれば、そんな効率の悪いファンドに回さず、銀行とかに置いておいてください。
(が、NISAの裏技的に分配型がいい場合もあります。それはまた後日)
さて、ここまでざっとコストについて触れてきましたが、なかなか言葉だけではイメージがつかみにくいと思いますので、継続コストについてシミュレーションしてみましょう。
Excelを使えば簡単にできますが、各証券会社が無料で運用シミュレータを公開しています。ブラウザから簡単に使えますので、1度ご自身でやってみることをお勧めします。
いろいろ使ってみた中で、SBI証券のシミュレーターが簡単に使えてしかも高機能でお勧めです。
例えば、毎年の期待利回りが5.1%のA,B2つのファンドがあり、Aファンドは信託報酬が0.1%、Bファンドは0.6%と0.5%の差があるとします。A,Bファンド共に毎月10万を20年間積立たときのシミュレーション結果が右下のA:青、B:緑のグラフです。オレンジのグラフは利益に対して毎年20%の税金がかかってしまった場合のシミュレーションです。
信託報酬がわずか0.5%違うだけで20年後には220万以上の利益差が出ることを知れば、3%の信託報酬が如何に高額なコストであるかを理解できるようになるでしょう。
もちろん、運用期間を長くとればとるほど、利益差はますます開いていきます。知らないということは、本当に恐ろしいことです。
ということで、まずは二つのコストについて簡単にご説明しました。
では、ファンドとETFの話に戻りましょう。
ちょっと長くなりますので、ここから別の記事長期投資ファンドとETFの比較(その2)に書くことにします。